ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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モダンジャズピアノの巨匠ビル・エバンスの、発売されたすべての録音盤を解説してある完全制覇本。秋に紹介した郊外書店の専門書コーナー「音楽〜ジャズ」棚で見つけた。できて初めて行った時、「ジャズ」と書かれた挟み板を見つけて嬉しかった覚えがある。 若い頃は、興味のある本はどんどん買っていたのだが、本が生活空間を脅かすようになるにつれて、手元にないと困る本かという基準が、まず、心のストッパーになって、こうした趣味の本を買う機会がぐっと減った。でも、そうしたら、なんだか自分で自分を制限しているみたいで、よくないなという葛藤もあって、棚の前で十分近く逡巡して、ようやく買ってきた。 なにせ、お気に入りのピアニストである。LP・CD合わせてかなりの枚数持っているし、今も、期間限定の廉価盤が出る度に買い足して増殖中。最近買うのは、発売時、評価の低かったものが多い。当時の評価が今も通用するとは限らないので、今聞くと、意外な発見があったりする。それを楽しみに……。だから、そうした穴狙いの手引き書として重宝だった。これから、どの盤を買い足せばいいか、よくわかる。 ビルには、非公式に録られた音源を、後になってレコード会社が正式に発売するといった形で世に出たものが大量にあり、ブートレク(海賊盤)を除いても膨大なレコードがある。死後、発掘ブームになって、毎月のようにライブ録音が発売されたが、正直、玉石混淆の感が強く、聴くに堪えない粗悪盤も混ざるようになった。 その上、同じコンサートツアーの音源でも、最初様子見で、二枚組で出て、好評だったので、次に八枚組、最後に全曲網羅のコンプリート盤が出る。その逆に、網羅盤が出て、後にダイジェスト盤が出るとか、あるいは、いくつかの盤に分かれて収録されていたものをまとめたものなど、複雑怪奇な変遷を辿る。こうして、よほどの偏愛家でもない限り、エバンス全盤の掌握が不可能な事態になっていた。JAZZはどのCD買えばいいのかわからず、敷居が高いと言われるわけである。好盤・駄盤仲良くCD店の棚に並ぶ。それが、この本では録音順に並べられて、異同などを簡単に説明してあるので、すっきり分かる。 また、本人名義以外のサイドメンとしてクレジットされているものも網羅されていて参考になった。これで、有名になる前に、お仕事として、かなりのセッションに参加していることが分かった。これは発見だった。これまで、私は、処女リーダー作「ニュー・ジャズ・コンセプションズ」(リバーサイド)からしか彼を考えていなかった。ちらりとソロが出てくる程度のマイナー盤までフォローしている愛好家はよほどの少数のはずなので、この点、さすが専門家、ご苦労様といったところ。 ただ、エバンスほどの巨人である。ジャズ史を飾るような超名盤については、ほぼ、見開き一、二枚で書くという枚数の制限もあり、少々物足りなく思う人も多いのではないか。そこだけ、抽き出して論ぜよと言われれば、もっと卓見を書く素人衆はゴマンといるはずである(同作者に、代表盤のみを解説した別の本があるらしい。その辺はその本でということらしい)。 解説の文章も、分かりやすい語調で、小難しさを出さないように意識して書かれているのは分かるのだが、例えば、名曲「ナルディス」のあの有名なメロディを、平気で「タタン、タタタタ、タタン」なんて調子で書いてあるのにはマイッタ。これなぞ、心の中でメロディが鳴っている人でないと、分かるわけがない。書かないのと一緒である。楽理というほどのことでもないが、ビルの全盤解説本を買おうという読者である、結構、ジャズに造詣が深いと想定されるのだから、もうちょっと、音楽批評家らしくカッコいいところ見せてほしかった気がする。音楽専門用語をちょっぴり入れるとか、コード進行がどうのとか、ソロのコーラス数がどうとか、せめて……ねえ。 もしかしたら、そうした簡単な楽理にさえまったく疎い人なのかも知れない。確かに、全然知らなくても、思想からとか、社会背景からなど、論ずべきことは沢山あるし、それで評論家としての看板はあげていられる。 しかし、ラジオのパーソナリティーとしても活躍した故本多俊夫さんの書かれたLPのライナーノーツなどを読むと、彼は元ベーシストだったので、簡単なコード進行などを示しつつ、曲の構造を説明してくれたりして、理屈で音楽を聴いている多くの頭でっかちたちには、逆に参考になったものである。そんな視点が、この本には、ほんのもうちょっとほしかった気がする。 因みに、私の大好きなビルの愛奏曲は、「タンタンタンタン、タタ、タタタタター」です。 どうです、さっぱりわからないでしょう?
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