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ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。

 内容は、文学・言葉・読書・ジャズ・金沢・教育・カメラ写真・弓道など。一週間に2回程度の更新ペースですが、休日に書いたものを日を散らしてアップしているので、オン・タイムではありません。以前の日記に行くには、左上の<前月>の文字をクリックして下さい。

 

・XP終了に伴い、この日誌の更新ができなくなりました。この日誌の部分は、別のブログに移動します。アドレスは下記です。

 

エキサイトブログ 「金沢日和下駄〜ものぐさ〜」
           
http://hiyorigeta.exblog.jp/

 2007年02月10日
   盛りだくさんすぎるような……

 以下は観劇感想文「かあてんこおる」のために書いたものです。そちらにもアップしてあります

 

 盛りだくさんすぎるような……
      こまつ座公演「紙屋町さくらホテル」第264回例会

 

 井上ひさしの戦争ものの集大成といった趣の芝居だった。その上、演劇の裏を見せるバックステージものという側面もある。会話の端々に簡単な日本演劇史や演劇論を散りばめて、劇が出来上がるまでを観客にお見せしようと言う趣向。一種の演劇讃歌である。初演が新国立劇場こけら落とし公演ということで、TPOはバッチリだったろう。
  昭和二十年、広島。登場するのは、いずれ原爆で壊滅することになる移動演劇さくら隊の丸山定夫(木場勝己)・園井恵子(森奈みはる)ら。そこに、これまた実在の長谷川清海軍大将(辻萬長)が絡む。この人、太平洋戦争末期、天皇に現状を正直に報告した人物として歴史に名が残る。昨年読んだ半藤一利『昭和史』でも触れられていた。こうした戦争史の別々の挿話をうまく絡ませるところなど、さすがの手口である。その他、「マンザナ、わが町」を思わせる、帰国日系二世が両国から敵性人とされた話や、N音には否定的なニュアンスがあるという論文を書いた優秀な弟子の特攻死を語る言語学者の話なども絡んで、何とも盛りだくさん。途中、井上得意の言語論が続くことになる。
 こうした細かいエピソードがモザイク状に散りばめられて進むので、芝居が長いこと長いこと。休憩を入れて三時間半に及ぶ。そのため、正直、途中でダレを感じた。
 話の根幹の天皇論で、彼は何を言いたいのだろうと意識して聞いていたが、どうやら、「天皇は与えられた中で努力されていたが、でも、もう半年早く決断されていたら、あんなに多くの犠牲者はでなくてもすんだはずだ。その点で、彼にはやはり戦争責任がある。」といっているようだ。
 物語は、戦後、長谷川大将がGHQに乗り込み、「私には戦争責任がある。掴まえてA級戦犯にしてくれ。」と頼み、断られるシーンから始まる。エピローグで同じシーンに戻っていくが、そこで長谷川は、私は、天皇の意を汲んで内偵していたのだ、つまり、私は天皇そのものなのだという意味の言葉を吐く。天皇を崇拝している御仁が、自分を天皇に擬する、そんな不遜な台詞を言うはずはないので、違和感を持つところだが、もちろん、観客は判っている。井上がそう言わせたかったのだ。それは、この物語おいて、現状を探り今後の日本を考えているこの長谷川という人物が、イコール天皇として造型されているからである。作者は、GHQ側が天皇責任を回避したことを、この額縁で暗示しているのだと種明かしをしたつもりなのだろう。しかし、そんなこと言われなくても判っている。台詞として言ってしまっては台無しではないか。総じて、登場人物は喋りすぎである。台詞も作者の影が濃すぎて解説臭い。
 全般的に、あの話この話とモチーフを載せすぎて凝縮性に欠けた嫌いがある。芝居讃歌と天皇責任論で充分である。マンザナもどきと言語論はカット、解説調の台詞も刈り込み、芝居を短縮すべし。
 出演者は、初演時(平十三)、大滝秀治・宮本信子ら超豪華俳優陣だったようだ。今公演では、なんと言っても、初演にも出ていたこまつ座常連、辻萬長の存在感が光る。陸軍密偵役河野洋一郎も力演だった。長丁場お疲れ様。
 惜しい、傑作一歩手前。そんな印象の芝居だった。

                                        (さくら散る)
                                   (2007.2.5)

[1] 

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