ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
内容は、文学・言葉・読書・ジャズ・金沢・教育・カメラ写真・弓道など。一週間に2回程度の更新ペースですが、休日に書いたものを日を散らしてアップしているので、オン・タイムではありません。以前の日記に行くには、左上の<前月>の文字をクリックして下さい。
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七月の読書会で係の生徒がこの小説を選んできた。一つ一つが短編としても読めるように章立てをして、全体としてひな菊という女の子を浮き上がらせる一つの大きな話にしてある。会のテキストとしては、その中の「2 居候生活」だけを取り上げた。 奈良美智のイラストが別冊としてついていて、二冊でセットになっているのが特色。今年、金沢二十一世紀美術館で展覧会があって、初めて彼を知った。ちょっと陰気な感じの女の子を描く画家だが、吉本は彼の絵を見ながらイメージを膨らませて、話の続きを書いていったそうである。その場その場でイラストが挿入されているのではない分、小説のどの部分を描いているのか、後で絵の冊子を開いてあてはめるのもイメージが膨らんで、なかなかいい。 文章は上下二段組ながら行間をランダムに空けたり、急にその行だけ字数が多かったりと意表をつくレイアウト。これには驚いたが、以前、吉本は、活字を活字と思ってしまうと、今の子は読んでくれない。字だと思わせないようにするのが大事だという旨を語っていたので、これも、読書の楽しさを出すギミックの一つということなのだろう。「これ何? レイアウトミス?」といった感覚で読めるので楽しい。ただ、このため、一冊の字数は頁数の割に少ない。 しっかり意見を言ってくれる子ばかりだったので、会は淡々と進んだが、ひな菊はどこにでもいる子だと述べた生徒もいれば、変わった子だと述べた生徒もいた。最後に書いてもらったアンケートでも、「自分と正反対の意見が出て驚いたが、その人なりの理屈があって、色々な受け止め方があるんだなと思った。」というのが多かった。確かに、この二つは一見正反対のようである。 私は、最後に、次のようまとめた。
「常識的に考えると、やっぱり、ちょっと変わった子だろうね。三年間も一緒に暮らした同性のルームメイトと別れる日、相手はセンチになっているのに、彼女は結構クールだし、せっかく独立して部屋を借りるのに、事務所の一室のような部屋を即決して不動産屋を驚かせたりしている。普通だったら、まず断る間取りだよね。 両親がいない彼女の身の上を考えれば、一緒に住もうと言ってくれる叔母さんがいるのだから、甘えるのが一番いいように思うけど、それはしていない。そうした甘えた生き方をする人ではないんだね。 みんな、「高春との友だちのようなつかず離れずの関係も、これはこれで、アリ。」と言っていたけど、彼にしてみたら、この状態は本意ではないと思うよ。おそらく彼は彼女が好きなのだろうね、普通、一つ部屋に暮らしたのだから、大人の関係になっても不思議ではない。でも、彼女は、深く踏み込まれるのが苦手だし、彼もそれをよく知っている。だから、彼はそれを大切にして、まるで友だち関係のような関係を続けていたのだろう。 そのことは、彼女が「そんなことしたら私たちが付き合っているのがばれちゃうわよ。」といった時、「俺たち付き合っていたんだ」と彼が冗談で返すのを期待していたのに、彼が沈黙してしまったことでも判るんじゃないかな。彼女は「まずい」雰囲気になったと深刻なるのを避けているけど、内心、彼女も彼をことを好ましく思っているのは間違いないことだし、彼も、もちろんそう。だから、彼女的にはそれでいいのかもしれないけれど、やはり、端からみたら、この関係は宙ぶらりんだよね。(つづく)
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