ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2011年01月16日 :: 泉麻人の講演会を楽しむ |
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二ヶ月前にあった講演会の感想。遅ればせながら。 二十年ほど前、番組「テレビ探偵団」(TBS系)の「私だけが知っている」というコーナーで、マニアックな昔テレビネタを披露して一気に人気者となった泉麻人の学生向け講演会を聴いた。私より数歳年上だが、まったくもって同世代。「エイトマン」シールを集めるためお菓子を食って肥満児となり、肥満児ばかりを集めてグループサウンズを作ったり、麻雀で補導されたり、ストリップ小屋に行って、そこであらぬことか担任を見つけて驚いたりと、聴いた生徒たちは、ちょっと不良っぽく聞こえる体験の豊富さに着目していたようだが、我々同じ世代の人間からみると、そう驚くような話ではなく、大人も子供も、今から考えると大雑把で大らか時代だったから、多かれ少なかれ「俺もやっていたなあ。」というくらいの受け止め方となる。「子供には絶対言わないけれど、俺の学生時代には、こんな事をしでかしてねえ……」といった話は酒の席でよく出る。 子供の頃、自分独自の歌謡曲週別ベストテンを作って、架空の得票数も表に記していたエピソードは、今の子には思いもよらぬ遊びだったらしい。しかし、私にしてからが、一九七三年頃、「オール・ジャパン・ポップス・ベストテン」なるラジオ番組を聴いて、その週のランキングを当てるクラス仲間の遊びに参加していたくちで、彼と似たようなもの。その楽しさはよく判る。テクノロジーの発達がそうした手作り的な遊びを奪ったのかもしれないという感想文を書いた子がいて、なかなかしっかり分析できていると感心した。 ただ、「鉄腕アトム」のスポンサーは明治製菓一社だけだったとか、完全に忘れているような微細な情報をすっと出してくるところなど如何にも彼らしいが、その時代を知らない世代には、その情報のマニアック度が高いのかそうでもないのかさえ判然としないかもしれない。 「ためになることを話すのは好きではありません。」と話の途中で断言しているのだから、この講話に「実益」や「教訓」を求めても無駄である。まさに、そこに、それまで捨てられていたサブカルチャアを掬いとって仕事にしてきた彼ならではのアイデンティティがあると私は思ったのだが、聴いた大人の中には、呆れるくらい中身のない話だと思った方も大勢いたようだ。昔の記憶を微に入り細に入り、ついさっき経験してきたことのように語ることができる能力はそのまま「物書き」の資質の豊かさにつながっている。私は大いに楽しんだのだが、後で聞くと、私はまったくの少数派だった。 生徒たちは愉しく聴き、感想文では、「面と向かって教訓は何にも言わなかったけれど、こんな生き方があるよと言ってくれているみたいだ。」というのがあった。ちゃんと受けとるべき点は受け取っている。それでよい。
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