私の学生時代に出始めた岩波ジュニア新書。当時は、ジュニアなんて言葉のついた本なんて読むもんか!という気分で毛嫌いしていたのだけれど、今は、専門家が、各分野を分かりやすくかみ砕いて書いてあって、岩波新書を読む前に、このシリーズでいいのなかったかなと探す有様。茨木のり子「詩のこころを読む」なんて、彼女の代表作である。 この商売やっている割には、「レトリック」についてまとまったものを読んだことがなかったので、これにした。入門編としてちょうどよい。 この本では、大きく分けて、
1「意味のレトリック」。 2「形のレトリック」。 3「構成のレトリック」
の三つの分野、合計三十の修辞法を紹介している。名作・話題作を引用しながら、ゆったりと解説しているので、実に分かりやすい。四つほどご紹介。
「共感覚法(シネスシージア)」(五感間で表現をやりとりする方法。例…暖かい色) 「緩叙法(マイオーシス)」(控えめな言い回しでかえって強い意味を示す方法。例…好意をもっています)) 「曲言法(ライトティーズ)」(反対の表現を否定することで強く表現する方法。例…安い買い物ではなかった) 「撞着法(オクシロモン)」(反対の意味を組み合わせる方法。例…公然の秘密)
難しい専門用語だが、解説・用例を読むと、「なんだ、普段、意識もせずに書いていることじゃないか。」と思うものばかりであった。ラベルだけがやたら難解である。 もうひとつ、「くびき法(ジューグマ)」というのは、ひとつの表現を二つの意味で使う方法。 代表例は「スカートとスピーチは短いほうがいい。」という有名なやつ。 ウエイトのかかっているスピーチのほうは「時間」的なもので、ちょっとエッチでユーモアを添えているスカートのほうは「空間」的なもの。この、本来ずれている多義的な意味を一つにしてしまうやり方である。 ここでも紹介されているけど、このことわざ(?)にはオチがある。 「もちろん、ない方がもっといい。」
中年のおっさんは、そこで、本を措いて、スカートを穿いていない女性を想像する。パンツは肌色パンストで隠れ、上着の裾がぴらぴらしている。いかにも舞台裏という感じではしたないだけ。どっちがいいかと聞かれれば、やっぱり穿いていてもらったほうがいいなあ。そっちのほうが色気を感ずる。脱ぐ色気でなく、着衣の着こなしから漂う色気。 ただし、やっぱりスカートは「短く」ね。 もちろん、「スピーチ」のほうは、「短い」より「ないほう」に賛成です。
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