ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2005年10月19日 :: 金沢21世紀美術館は大繁盛(その三 ようやく本論編) |
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実は、先日、戯れに「金沢」をキーワードにしてブログ検索をしてみた。出てくるわ出てくるわ、金沢観光印象記のオンパレードである。続けて読むと、観光客がどういうルートでどう金沢を味わったか、流れのようなものが見えてきて面白かった。今は、21世紀美術館がトレンドのようで、日帰りで見に来る東京人も少なくないようだ。多く場合、大盛況に驚き、地元民が公園のように大勢利用していることに地域密着型美術館の理想型を見い出して、手放しの褒めようである。
ところで、金沢市民にこの美術館が待ち望まれていたのかというと否である。市の中心部、広大な金沢大学付属小中学校跡地をどうするかの検討会が開かれ、現代アート美術館を建設すると決定されたのが1996年のこと。その時の市民の素朴な感想は、「なぜ、金沢で現代アートなのか。」というものであった。せっかくの一等地、そんなとってつけたお客様向けのものではなく、混雑解消の大駐車場や図書館など市民サービスに振った施設のほうがいいという反応が多かった。市税113億円をつぎ込む大事業、失敗は許されない。 このため、市は、不信感払拭のため、「市民に開かれた」という部分に躍起になった。異例の20回に及ぶ開館前イベントの開催、どこからでも入れる公園のような設計、体験型作品を多く収蔵する、市民ボランティアの養成など。これだけ地元住民に気を遣った美術館も珍しい。逆に言うと、いかに市民が懐疑的だったか、わかろうというものである。 さて、蓋を開けてみると、連日大混雑。大成功が喧伝された。開館3ヶ月で年間目標の40万人を突破。そのニュースも全国配信された。また、NHKのニュース解説番組でも「勝ち組」として取り上げられ、30分に渡り全国放送で紹介されたりもした。結局、年間入場者数は150万人を突破している。 この驚異的な数字、素人でもわかる仕掛けがしてある。「キッズ・クルーズ」という横文字をつけて、市立小中学校の児童生徒は、絶対、学校から行くようにしたのである。穿った見方を敢えてすれば、市の一施設の成功を確実なものにするため、教育現場を利用したともいえる。それに、有料なのは中央だけ。建物の外周ゾーンは無料なので、歩行者で反対側に突っ切るため建物に入った人も立派な入場者となる。 こうした取り込みは、皮肉でもなんでもなく大成功だと思うし、努力は評価に値する。
ただ、どうして県外者をこれだけ集客し得たのかは、私には謎である。だれかが加賀梅酒のようにしかけたとしか考えられない。そうでなければ、地方の一美術館のことを東京の人がこんなに知っているはずがない。地方には腐るほど箱もの美術館があるのだから……。 田舎の凡夫には思いつくことではない。おそらく中央のコーディネーターあたりが入って情報発信のノウハウを伝授したのであろう。 どんなノウハウか。それは、「言ったもの勝ちの論理」だったのではないだろうか。 数が物言う美術館業界(?)のようである。通過者も入場者、地元の子供もみんな入場者みたいなやり方で、まず数を稼ぐ。特にスタート数ヶ月が勝負。それで評価が決まる。闇雲にダッシュしよう、そして大量入場者数を確保し、それを中央に大宣伝する。地元で大人気ですと中央に印象づけさせる。美術館業界では、数少ない「勝ち組」ですと早々に名乗ることで、評価を勝ち取り、後に事実としての勝ち組の地位を手に入れる、そんな先行逃げ切り策を発案したのではないだろうか。 何をするにも、今や情報発信の成否ですべてが決まる、事実がどうであるかは問題ではない、そう信じさせた方が勝ちである。お菓子も酒もアートも、そうした事態に変わりはない。 今は中央から過褒の嵐で、ご同慶の至りだが、美術館の白い壁がくすんできた頃からが本当の勝負である。 現館長は専門家である。その薫陶も今は宜しきを得ている。爾来、市の施設だからといって、間違っても役人を館長に据えることのないようにしてもらいたい。
(集客イベント 胡弓ミニコンサート)
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