ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2007年01月13日 :: 藤原正彦『この国のけじめ』(文藝春秋社)を読む |
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昨年最大のベストセラー『国家の品格』(新潮新書)が総論なら、この本の前半は各論といったところ。『国家の品格』は講演の活字化で、聞き手を惹きつけるために、断定的でちょっと説明不足の部分があったが、こちらは書いたもので、一編一編で完結していて、テーマに沿って書かれているため、各問題についての主張が明確である。 市場原理主義、改革至上主義、実学重視、早期英語教育を批判し、日本が誇るべき武士道の精神で、世界の力の潮流に迎合せず、孤高を貫こう、それで世界は日本を尊敬してくれると説く。 ある方の読後感に「近年の世界の動向や日本の行き方に違和感をもっていたが、その漠然と思っていたことがここにしっかり主張されていて、お陰ですっきりした。」という内容のものがあった。これは、年配の方の最大公約数的感想ではないかと思う。実際、先日金沢で行われた講演会は立ち見が出るほど盛況で、彼の持論に共感の拍手がしばしば起こったそうだ。 教養主義なぞもはや過去の産物という時代だからこそ、いにしえを知るものとして、今の流れは違うぞと声高に主張しなければと考える立場だといえば、その通りで、まったくの尚古調だが、今しか知らない若い人には新しい意見として映るようだ。 『国家の品格』を読んだ読書好きの高校生に感想を聞いたところ、そんな考え方もあるのかと思ったという。確かに、偉大な思想家として教科書に出てくるジョン・ロックを諸悪の根元のように貶しているのだから、へえと驚いたのも無理はない。 私自身、概ね共感をもってこの『この国のけじめ』を読んだ。この考えが、真に世人をして心動かさしむるを得ば、日本変革の端緒になるやもしれぬという淡い期待を抱きつつ……。 ただ、本としてみると、彼の言うことは、いちいちよく判る、判りすぎるほど判って、その分、面白みやスリリングさには欠けるという気もした。 今のお上は「美しい国」を連呼している。この本では民族主義は危険と厳しく拒否しているが、日本精神発露の理論として、為政者が便利に自らのご都合理論に組み込んでしまう可能性がなくはないという心配はある。 後半は、父母の思い出話や日々のエッセイ。こちらは大いに愉しんだ。文章がしっかりしている上、時にみせる漢語使用も効いている。なかなかの名文家である。ユーモアのセンスもイギリス流といえるようなウイットに富んだもの。特に、恐妻ネタ・もてもてネタには大笑い。先の講演会の冒頭でも、「妻から、貴方は人柄に「品格」がないので人前に出るなと言われております。」と切り出して会場をわかせたという。 主張的な文章とエッセイが同居する少々雑多な内容だが、逆に、それで彼の文筆の間口も俯瞰できる。その意味で、『国家の品格』よりこちらがお勧め。私としては、今度は一冊すべて随筆の著作を読みたいと思った。
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