歓送迎会の当番幹事が私だという。早く企画をせねばならぬ。料理店も混むシーズンである。自分が自分で作る自分のための送別会案内になる可能性絶大。ちょっと考えて、文案は春の夜の漢詩から始めることにした。
歓送迎会のご案内 幹事(私の名)
春宵一刻値千金:春の夜は、みじかい時間でも千金の価値がある 花有C香月有陰:花は清らかな香りがあるし、月は闇の雲に陰っている 歌管樓臺聲細細:宴の歌声と楽器の音色が楼台から微かに聞こえてくる 鞦韆院落夜沈沈:昼間は宮女が乗ってにぎやかだったブランコの
ある中庭も、今、夜となって人影はなく、静かに更けていく (蘇軾「春夜」 拙訳)
春の夜の心の揺れには、待ちわびた春の訪れの歓楽も、また、人が去った後の寂寞をも含んでいるのでしょう。去る者有れば来たる者有り。この度、○名の先生が異動されることとなりました。(私の名)先生は十五年、……(以下複数対応)の長きにわたり本校で教鞭をとられました。この間、本校の教育に、どうたらこうたら、なんたらかんたら。そして、新たに△先生(複数対応)をお迎えいたします。春の宵、ふさわしき処を得て、名残を惜しみ、新しい抱負を分かち合いましょう。皆様方のご参集をお願い申し上げます。
記
日 時 平成丁亥歳四月×日×曜日 午後七時より 場 所 ○×楼 (石川県金沢市○×町) 会 費 ○千円
宴では、下座の私が司会をして、私に話を振り、私がタッタと上座に走っていってお別れの挨拶をするという図を思い描いて、一人で笑った。 せっかく、頭が「春の夜」イメージになったので、即興で作った古歌風一首。もちろん、藤原定家の本歌とりである。
春の夜の夢の浮き橋わたりつつ雲居に隠る月のまだ先
(三月も中旬以降になると生臭くなる話題。笑い話の今のうちにアップ。)
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