ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2007年07月29日 :: 青年劇場公演『銃口ー教師・北森竜太の青春ー』を観る |
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(観劇感想文です。「かあてんこおる」の項にもアップしました。)
真っ直ぐな芝居
青年劇場公演『銃口ー教師・北森竜太の青春ー』第267回例会
真面目で真っ直ぐな芝居であった。それが清々しい。 希望に燃えて小学校教員となった主人公(船津基)が、北海道生活綴り方教育連盟に参加していたため、アカと間違われ特高の拷問を受け、退職せざるを得なくなるというのが前半の展開。 職員室内の、皇国教育を推進する校長と子供中心に考える教員たちとの温度差がうまく描かれ、当時を知らぬ私も、さもありなんと思わせるに充分であった。 後半は、九死に一生を得た主人公が、戦後、帰国し、教職復帰の自信のなさを吐露するものの、遺書を届けた故上官の母から感謝されることで、再び教育者として生きることを決意するまでを描く。 原作は三浦綾子。最後の小説から一部を切り取った芝居だという。戦前、何の疑問もなく教え子に軍国教育を施してしまった体験と反省がこの物語の展開に深く反映していることはいうまでもない。悔いて教育者として戻らなかった作者が、この話で、かくあれかしと思った人物像を造型し、理想を託したと考えるは自然なことだ。そうした視座がはっきりしているので、観ていてストレートにメーッセージが伝わった。 登場人物は、彼を慕う恋人はあくまでも純心で、特高はあくまでも憎たらしく、人のいい刑事さんはあくまでもこの家族思いというように、あまりに雛型通りなのだが、それが、逆に見ていて安定感につながっていたように思う。 出演者も二十二名と、最近の芝居ではたっぷり使っているほうで、職員室、下宿、実家、ロシア戦線、東北の農地など場面数が多いのも印象的だった。抗日に射殺されそうになるシーンの緊迫感、ラストの東北の風景のひろびろ感とのコントラストなど、各場毎に雰囲気が違っていて、飽きさせない。その都度、裏方は大変だろうが、労力をかけているだけの効果ははっきり感じられた。 お説教臭いところがある青年劇場として、今回は作品メッセージの強靱さの下、下手な主張をしゃべくり散らすことがなかったのも好印象で、これまでの中で出色の出来であった。 戦後何十年か、戦時の異常さを描く文学や劇などが沢山世に出た。作者も受け手もすぐ過去に実経験があったればこそである。それが、戦後六十年を経過し、当事者もほとんどいなくなり、大戦は「歴史上の出来事」となってきた。この種の体験談を身近に見聞きすることも本当に少なくなった。 この舞台、少々類型的展開だが、このストレートさは、今の時代にこそ貴重のような気がした。 以上、評価としては、主人公が同業者の芝居だったので、ちょっと点が甘くなったかもしれない……。 (父親でさえ戦争に行っていない世代の馬鹿息子より) (2007.7)
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