ペンタックス使い憧れの的、名機LXを、義父の葬儀の際、親戚の方からいただいた。何十台とカメラ・コレクションがあるという方で、私がペンタ使いだと知ってわざわざ持参いただいたもの。 ファインダー交換式というマニアックなシステム。ずっしりとした金属ボディの質感。雑誌付録の復刻取扱説明書もつけていただき、操作で判らないところはそれですべて調べられる。もう至れり尽くせりの心遣い。長く販売されていた機種なので、小変更があるはずだったと、何型ですかとお聞きすると、後期型とのこと。どこが違っているかもしっかりご存じで、こちらがペンタ党ですなどというのが恥ずかしいくらいである。 フィルムも持参していただき、その場で入れたが、久しぶりのアナログ機、葬儀写真で失敗してはいけないと思い、その場では撮らなかった。季節がよくなり、花など被写体も増えて、ようやくフィルム一本撮り終わって現像に出した。 出来上がった写真を見ると、露出もドンピシャで、何の問題もない。中古はシャッター動作が渋く露出オーバーになっていたり、弛みが出て無限大が出ない症状が一般的に知られているが、それらは一切無し。外見の傷みもなく、中古店では「極上品」と札がつくこと必定である。 所有するレンズのうちデジタル専用以外は全部つくので、取っ替え引っ替えして一挙にお楽しみが広がった。FAリミテッド77mm黒もよく似合う。 このカメラ、機構的には機械式と電子式のハイブリッドというのが特色で、今の目から見ると初歩的な電子部品が組み込まれている絞り優先AE機である。中を開いた写真を見たことがあるが、ビニール皮膜された電線が行き交いハンダ付けされている基板が組み込まれている昔懐かしい景色だった。 撮る際は、ファインダー右側に表示が出るので露出はお任せでよく、ピントの山も上下合致式で見やすく、今のカメラに慣れきって楽をしている私には使いづらいのではないかと危惧していたが、全然、敷居が低かった。シャッター切ったらすぐにフイルムを巻き上げる動作もちゃんと無意識にやっている自分を発見し、「三つ子の魂」だと微苦笑。 もちろん、ピント合わせに少し余分な時間はかかるが、そもそも無駄撮りはできない。慎重に構図を決めてシャッターを切るので、そのテンポの一環としての作業といった感じで、苦にならなかった。
頂いたボディに付いていたのは標準レンズF1.4。それにもう一本、スクリュー式レンズもアダプター付きでいただいたので、今度はそれをデジタル・ボディにつけて楽しんだりもしている。MFレンズでも、半シャッターしながらピントリングをまわすと、合焦した時点でピッと合図してくれるので、オートとほどんど変わらない。 名機の誉れ高い機種だが、飾っていては意味がない。ここのところ、黒革のネックストラップに取り替え、手持ちのアイキャップやシューカバーをつけ、レンズキャップを実践的な中央つまみ式のものに交換して、実働用に仕立てた。久しぶりにフイルムに復帰しようという欲が出て、カメラ店で、今、フイルムはどんなものが生き残っているのかもリサーチした。売り場は当然ながら今や片隅。 ペンタ使いとして、LX持ってますといったら、それでなんだか一人前のようで、ちょっと箔が付いた感じ。フイルム代や現像代が昔より値上がりしており、同時プリント代を含めると結構お高くなる。トータルでみると、アナログ遊びは贅沢な趣味である。 (2011.6.12)
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