オーディオ帰り新参
オーディオよりソフトにお金をかけたい人なので、貧弱なオーディオ機器しかないのですが、先日、何十年ぶりに単品オーディオを買いました。そこで、ちょっと使用レポートを載せてみます。
久しぶりにアナログに戻った中年が買ったごく普通のレコードプレーヤー「コスモテクノ DJ−4500」印象記(使用レポート)
一万円でお釣りのくるような安物とマニア向け高級品の狭間で、ほとんど中級機がなかったレコードプレーヤー市場に、ぽつぽつと新製品が出てきた。これは団塊の世代の退職を見越した動きで、実際、団塊の世代向けと銘打って、所有品の修理可能状況を教示したりする「再オーディオ入門」の記事がWEBの家電量販店サイトにあったりする。なかなかに商売上手である。 小生、それより下の年齢だが、視野の中に再びLPの再生が入ってきたという点ではまったく同じ。多くもない常識的値段の機種を、少しく検討して購入したのが、このコスモテクノという会社のDJー4500という機種。昨年秋発売の新製品である。使用して半月。これからアナログを検討している方の参考にと、以下、簡単に使用レポートを書きたい。 コスモテクノにはDJー3000という機種があり、お手頃なアナログプレーヤーがほとんど市場から消えていた時期、この機種がその穴を埋めていたことがある。隠れたベストセラー的な存在だった。DJー4500はそのグレードアップ版で、基本的なコンポーネントは共通である。インシュレーターの大型化、PICKERINGのEP-HiFiカートリッジを標準搭載するなどしてレベルアップをはかっている。 デザインは、テクニクス1200系と同じ。最初、OEMかと思ったが、そうではないらしい。ダイレクトドライブタイプで、DJ仕様を兼ねており逆回転ボタンやスピード可変コントロールがつく。ワウフラッターは0.15%と標準的。0.1%まではいっていないが、ターンテーブルも大した重さがなかったので、そんなものだろう。値段相応である。 音は、豊饒な中音がどんどん前に出てくるタイプではなく、明るめですっきりしている。しかし、CDのような痩せた音でもなく、アナログの録音の傾向を素直にそのまま出してくる。これはカートリッジの性格からきているように思う。この価格帯を買う人で、高価なカートリッジに買い替える人はあまりいないだろう。この標準装備のもので充分である。ただ、カーリッジを変えると、どれだけ音が変わるのか、ちょっと誘惑に駆られる。 ブルーノート盤や五十年代末のマイルスあたりの音を聴くと、この安い投資で、それなりにアナログのよさを味わえる。但し、クラシックのアナログを聴くには、もっと高価なほうがいい。この機種では不満が出る。総じて、気軽にアナログを聴くには、思った以上にいい音を出しているという印象である。 注意点としては、アームのウエイトが17gまでしか対応していないので、カートリッジを変えようとすると軽いシェルが必要である点や、オートリターンがなくアームを戻し回転もスイッチで止めなければならならず、フルオートより二手間多い点があげられる。私自身、オートしか使ったことがなかったので、早速忘れて、無音溝を長々と掃除してしまった。 この機種の問題点は見た目の安っぽさにある。筐体のサイドはプラスチック成形然としていて見るからにチープ。蓋のプラスチックも一昔前のように青々としている。前面からよく見える防震の足も質感がよくない。 また、ヒンジと蓋のかみ合わせが甘く、蓋を開けると蓋ごと外れそうになったり、ターンテーブルマットの中央の穴が微妙に大きくぴったりこない上に、裏面にバリでもあるのだろうか、マット自体が多少デコボコしていたりする。ターンテーブルも回転すると微妙に揺れている。そうした精度面では、どこか詰めが甘い感じが残る。 見た目のリッチ感も大事という人には、全然、お勧めできないが、音は聞きやすく、単品オーディオを売れ筋価格帯の標準機でまとめている人にはちょうどいい。黒い筐体で自己主張せず、その昔、オーディオといえば黒が基調だったので、古い単品オーディオとの色味のバランスも悪くない。 (2007.2)
(参考…インターネット売価で、2007年2月現在、四万数千円前後)
追記 この機種、早々にカタログから消えた。古い機種が残っているのにどうしたのだろうと思っていたが、気にも留めていなかったが、先日、ピカリングのカートリッジが製造中止になっていることに気がついた。もう中止されて二年ほどたつようで、あわてて交換針をネット上で探したが、もうどこにもなかった。後の祭り。新製品の部類のうちに買って、そうもたたないうちに供給がとまったことになる。明るく元気な音を出していたので気に入っていたのに……。結局、針の交換をされることがないまま、この針のためだけにあるカートリッジという役わまりになってしまった。せっかく、カートリッジ分高い機種を買ったのに、全然意味がなくなってしまったので、ちょっとレコードプレーヤー会社に文句のひとつもいいたくなるではないか。
これ、滅びゆくテクノロジーを未だに追いかけようとすると、色々な障害がつきまとうことを覚悟せよということなのかもしれない。(2010.5)
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