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書評・北陸の同人誌評

  この頁は、「書評」と「北陸の同人誌評」を掲載しています。
 「書評」は、文学誌「イミタチオ」誌に掲載された「北陸の本」、教育機関のパンフレットの掲載されたもの、ミニコミ誌に掲載されたものと初出はさまざまです。
  「北陸の同人誌評」は、同じく文学誌「イミタチオ」誌に掲載された「北陸の同人誌評」コーナーが初出です。

  (北陸の本)1996年 津田洋三「驟雪」他

(北陸の本)1996年(平成8年)

 

エッセー26人集ー1996ー」(小松市生涯学習モデルグループ「エッセーを創る会」)

 

 小松市文芸懇話会有志によって発足した同会の四冊目の随筆集。年一冊ペースの刊行で、タイトルにその年の会員数が入る。ちなみに一冊目は20人集であった。活動の歩みをみると、毎月、市立図書館で例会を持ち、時に、輪読会や文学散歩をされているようだ。一つ一つのエッセーは見開き(原稿用紙約二枚半)の短いものだが、各人の人生の大事な部分が凝縮して語られていて、<人生>を感じさせる作品が多い。特に「戦後五十年」「生と死」が、今回、年間テーマになっていた関係もあって、戦争と死についてのテーマが目立った。事故死した亡き叔父を偲んだ「生と死」(松尾圭子)、特攻隊員の出撃前の様子を描いた「戦後五十年の追想」(又多寿一)、友人の病死の印象を語った「トシオさんのへんねま」(西口嘉昌)など。古い話題が多いが、作者にとって、その時の印象が、今、自分に切実に感じられてきているということなのだろう。
 文章は、表現に無理がなく自然で、随筆として段落の取り方などもよく研究されている。こうした作品集は、往々にして玉石混交となりがちだが、会員の研鑽の成果がよく表れていて粒ぞろいであった。ワープロ印刷の軽装本だが、味わい深い本である。
 

「青の地図」三井喬子(朱い耳ハウス)一五〇〇円

 

 詩誌「朱い耳」を中心に活動を続けている三井喬子の詩集。こうして彼女の作品をまとめて読むと、想像の発酵模様が見えて作品にアプローチしやすくなる。彼女の詩の特徴は、シュールな想像の飛翔とその語り口にある。女性としての情念が基底にあって、それが露わに表現されるのではなく、奇妙な夢想となって紡がれていくところが個性的だ。
 「患者C」は、車掌の車内案内の口調を借りて、臨終前の、心に残在する愛の諸相を紹介する。わかりやすく秀逸なイメージだ。「ターヘルアナトミア」の「急いで臓器たちを取り込んでファスナーを締める」というイメージも鮮烈。ただ、イメージがどう連関しているのか理解しづらい作品もいくつかあった。こうした作風の詩の場合、読者が作者と同じ夢想世界に同化できるかが鍵となるので、妥協しない範囲で、読者に配慮することも必要だろう。
 豊饒な詩心、詩集としての統一感が申し分なく、詩人の資質に今後も大いに期待したい。


「驟雪」津川洋三(短歌新聞社)二五〇〇円

 

 歌誌「新雪」の責任者である作者の第五歌集。先の第四歌集「表音文字」以後、六年間の三五三首が収められている。この間、友人義弟が世を去り、社会不安も相次いだ。そうした思いを、師大野誠夫が選んだ第一歌集の題の候補のひとつであった「驟雪(しゅうせつ)」という言葉に託して、改めて表題としたという。「驟」は「にわか」の意。吉行淳之介の小説「驟雨」を思い出す。「にわかに雪がふるー人生の予期しないわざわいなどを象徴する(中略)北陸の風土も併せて象徴する」と大野のメモにはあったそうだが、この表題の説明に、歌集の性格は語り尽くされているように思う。
 「幾重にも護岸をなすに雪ぐにの浜侵されて海荒れゐたり」(新湊五首)の大きな詠みぶりをはじめ、自然や生きものを詠った歌に、北陸人としてのアイデンティティを感じさせるものが多かった。世の中の転変は「ウ・ナロード 市民叫ぶをまさに聞く啄木の詩にて知りしその語を」(ソビエトロシヤ政変)などの歌々に、挽歌は「定命の歳月われは世に在りて君の記憶を美しくせむ」などに代表される。また、時に「考へて親が付けたる名の前に素直に坐るパネリストたち」といったユーモアも忘れてはいない。
 豊饒な詞藻、特に漢語の使用に長年の経験が生かされており、格調の高さの奥に、テレビを視、旅行をし、医者の診察を受けるといった日常生活がほの見える。このバランスが作品集を一級のものにしているように思う。写生あり、実感素朴あり、情念の世界あり、ライトバース調ありと表現は多彩で、それが少しも統一感を乱さず、落ち着いた同居ぶりをみせているのは、やはり、北陸人として、転変する現代を生きているという立場の強固さがさせているのだろう。詩心を触発されることの大なる歌集であった。

 

「5つの物語−POEM詩D」喜多村貢(POEM詩D事務局) 二〇〇〇円 

 

 「独標」同人喜多村貢の第二詩集である。といっても本ではなくてCD。詩集といっても、五つの作品が物語形式になっているので、ラジオドラマの趣きがある。朗読のみではなく、バックには曲もついて、変化があって実に楽しい。評者は通勤の車で聞いたが、二週間CDプレイヤーに入れっぱなしで何度も読んだ(?)。詩評のためのこんな楽しい「読書」は初めてだ。テーマは「愛と運命」だそうで、民話調の「白骨伝説」が出色。金沢の地名が頻出する「ある娼婦の独白」を開きながら、その場所を偶然通っていたなんてこともあって、うれしくなった。また、(金沢・発)の全国発信を狙うという意気込みが、パッケージングからも充分感じられるアートディレクションである。孤独な本の編集作業に較べ、朗読者、作曲編曲、録音関係者など、多くの人が係わって出来た作品。作者自身、大いに楽しんだことだろう。そこが何とも羨ましい。

 

「野蓄薇咲くみちーわが詩のアルバムー」牌田童平(牧人文学社)一五〇〇円

 

 「牧人」の84、85号に載ったものを合本にして「牧人叢書V」として上梓したもの。戦前の幼少年期はあっさり扱い、戦後、大人になってからの自分と詩との係わりを回想した自分史である。一読して気づくのは、作者の回想がそのまま「戦後富山詩壇史」になっていることだ。それは、巻末に人名索引が九頁にも及ぶことでも知れよう。中央の詩人との交流などを読むと、富山県が豊かな文学の土壌をもっていることに羨ましくなる。

 

「夢見月」高橋協子 二三〇〇円

 

 詩誌「蒼」同人の三番目の著作集。詩とエッセイからなる。詩は多く「蒼」に掲載されたもの。エッセイはエッセイを創る会のエッセイ集や北国新聞「こまつのみ」に載ったものなどを集めている。五十歳代の女性の持つ落ち着いた生命へのやさしさがにじみでている作品である。特にエッセイは短いものばかりながら「朴歯下駄の音」など、昔語りが楽しい。あっさり短文で終わるのが惜しい。もっと長文が読みたくなる作品集だ。是非、挑戦して戴きたい。                                                        

                             (「イミタチオ」「北陸の本」)

    [1] 
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(永井龍男宛安岡章太郎自筆サイン入り本 運営者所有)

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