ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2011年01月22日 :: 地方の中学生も |
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NHKの番組でサラリーマンに本を読んでいるかというインタビューをしていた。読んでいる人のほとんどがビジネス書。経営者の信念を述べたものや人付き合いのノウハウ本など。時に司馬遼太郎などという名前を聞くとほっとする。そして思う。大人たちは自分の勤め人人生に役に立ちそうなことを直接書いてあるものしか読んでいないののだろう。こちらも似たり寄ったりの読書で文句は言えない。読んでいるだけでも素晴らしい。 問題は子供。今の子供たちに「十五少年漂流記」や「海底二万里」、女の子なら「赤毛のアン」などの「子供の古典」を、ちゃんと読んだことがある人手を上げてといっても、ほどんどいないのではないだろうか。高校生に聞いても近代文学の名作を教科書以外で読んでいる人は稀である。 先の正月休み、書店を巡っていると、地元高校の入試問題集が並んでいた。県下のすべての昨年問題が一冊本になっているもの、高校別に過去問数年分が封筒に入っているものなど各種あった。リスニング用CDまで付いている。地元新聞社発行のものが十数年程前からあるのは知っていたが、地方の高校入試にも大学入試並に業者が幾社も参入していることに驚いた。私たちの時代は、公立の前年問題をやってみた程度、私立はどんな問題なのか全然知らないまま受けたものだが、今、現物がある以上は買ってせねばならぬ。 そういえば、WEB上では模試の分析などを逐一報告する業者のサイトもあって、端から見ていると競争を煽っているように見えるものもある。かつて都心有名私学の「お受験」として聴いていた話は、今や地方にも波及していて、中学生は大忙しの様子が想像できる。過去問演習、模試の受験とてんてこ舞い、読書などしている暇などないのは当然である。 そんな経験が、三年後、大学入試でも繰り返される。子供は最早ヨレヨレ、うんざりなのではないか。そうして、そんな子が大人になったら、今度は信念として原本など特に読まなくても良いと考えようになるのではないか。現に私はそれで受験を勝ち抜いてきた。エッセンスだけまとめたものやノウハウ本を読めばそれでよい。それを能率的に使いこなす人こそ能力のある人だ、という認識となる。最近では、受験勉強風の国語読解こそ国語の授業ですべきことと信じて実践している若手国語教師も出現していると聞く。 しかし、それでは、直接的なことには参考になるが、いつまででも借り物で自分なりの信念や実感にまでは行き着かない。全体として、日の本の行くべき姿が見えている真の知恵者がいなくなるという悪循環が出来上がる。忙しくさせているお先棒を担いでいるので偉そうなことは言えないが、読書至上主義は今や風前の灯火である。 月並みな結論だが、受験の「戦争」面は本当に弊害が多い。試験である以上、能力が測られ、差がつくのは当然で、そのための努力は必要だが、「競争」のための努力はあまりかけさせないほうが人として歪まないのだがと、書店の派手な「高校受験コーナー」の平積みを見て、ちょっと暗くなったというお話でした。
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