ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
内容は、文学・言葉・読書・ジャズ・金沢・教育・カメラ写真・弓道など。一週間に2回程度の更新ペースですが、休日に書いたものを日を散らしてアップしているので、オン・タイムではありません。以前の日記に行くには、左上の<前月>の文字をクリックして下さい。
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2012年10月15日 :: 丸谷才一氏死去 |
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十三日死去。一九二五年生まれ、八十七歳。学生時代からお気に入りの文学者で、沢山著作を読んだ。 高校・大学時代、『日本文学史早わかり』など古典の評論は、大局的視点を提供してくれて本当に有り難かった。大学の学者は細かい話をするが、彼は細部の検証を怠らずしかも話が大振りである。それはまるで彼の推奨する後鳥羽院の和歌のごとくであると昔から思っていた。特に和歌集での和歌の配列についての論考は斬新で、教授に提出したレポートにも盛んに引用した覚えがある。 彼の日本語や日本語教育への提言の本も結構読んだ『日本語のために』他。『文章読本』も実用書としては?マークだが、読み物として断然面白く、この本の提要である「気取ってかけ。」は、作文の時間に生徒に言う定番助言になっている。 彼の営業品目で重要なのはエッセイ。多くは蘊蓄随筆とでもいうべきもので「面白くてためになる」。『女性対男性』のような気軽な読み物も抜群の面白さ。多くは和田誠のイラストが付され、絵文共に楽しんだ。彼はエッセイの名手といってよく、文体を一時期真似たこともある。 彼の長編小説はどこか風俗小説の香りがするのが特色で、代表作『たった一人の反乱』がその典型。私は大学の夏休み、実家の暑い昼下がり、たっぷり時間をかけ、楽しみながら読んでいったのをはっきり覚えている。最後の終わり方は『虞美人草』のパクリかも。 一番の話題作といえば『女ざかり』。これは良くできていて感心しながら読んだ。技巧のデパートのような小説で、お話自体よりもそっちのほうが面白かった。紫式部と重ねた『輝く日の宮』もそうした踏まえを楽しみながら読むのが正解なのだが、ちょっと冗長のような気がした。人物を彫り深め、情を以て読者を感動させるというのではなく、登場人物はどちらかといえば類型的で、頭で作っている感じが漂う。正直、一番下手だったのは小説ではなかったかしらんと内心思っていたが、どうだろう。おそらく彼の資質は、例えば中村真一郎などと同様、批評的精神のほうにある。 以上、訃報を知って、まったく思いついたまま書いた書きなぐり。買ったままで読んでいない近作エッセイが手元にある。それを読まなくては。
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