ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
内容は、文学・言葉・読書・ジャズ・金沢・教育・カメラ写真・弓道など。一週間に2回程度の更新ペースですが、休日に書いたものを日を散らしてアップしているので、オン・タイムではありません。以前の日記に行くには、左上の<前月>の文字をクリックして下さい。
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愚妻が、図書館から「万年筆」で検索しヒットした本をありったけ借りてきた。写真中心のカタログ風の本が多かったが、一冊、読みたいと思っていた古山浩一『万年筆の達人』(エイ出版社)が入っていたので、他は読み飛ばし、これをじっくり読んだ。 長く美術の教員をしていた画家の著者が、趣味の万年筆での出会いを財産に、各地の万年筆名人の話を聞き書きしたもので、手仕事職人さんへの聞き書きで有名な塩野米松氏と同様の仕事である。手書きの味わい深い万年筆イラストも多数掲載されており、話に出てくる古い万年筆がどういうものなのか、目で確認もでき、判りやすい編集になっている。 万年筆は、昭和三十年代後半から四十年代前半までが全盛期で、お役所が書類を「ボールペンで可」とした途端、急速に没落しはじめた。確かに、私の子供時代、小学校高学年頃には既に安物万年筆を持っていた。鉛筆の次はボールペンではなくて、すぐに万年筆だった。学習雑誌の購読予約特典が万年筆だった時代である。あの頃がピークだったというのは実体験としてよく判る。 そんな全盛をよく知っている元万年筆使いたちが最近戻ってきているようだ。先日、同級の友人からのメールでも、万年筆をまた使い始めたという一文があったし、最近のブーム、オジサン世代が今頃になってあの頃欲しかった高嶺の花を買うといったある種のリバイバル現象である。 この本、一つの業界の話を集めたものなので、出てくる方、皆等しく、戦後業界の急激な膨張と縮小の荒波をかぶっている。 例えば、この前買った手作り万年筆の加藤清翁も、製作のみではなく、壮年の頃には中近東に打って出るなど、商売人として広く活躍していたようだし、今、この世界で名を成している多く人が、生き残りの戦術を次々に変え、時には業種替えをしながら乗り切って来られた苦労人ばかりである。 心配なのは、ここに紹介されている職人さんの多くがご高齢であるという点。滅びつつあると思われていたこの技術が、今、残照の如く脚光を浴びている。しかし、弟子への伝承という伝統は既に止まっているので、二十年後、三十年後はどうなっているだろう。職人の技は、庶民には手の届かない超高級品となって生き残るしかないのであろうか。今はなんでもそうなっている。万年筆がそうならない保証はなにもない。 今回、この本を読んでから、『日本産万年筆型録ー今買える国産万年筆のすべてー』(六耀社)で、実際に作られている手作り品や大手企業三社の定番品をカラー写真で確認して楽しんだ。これで「国産の現在」がだいだい掴めた。 舶来物の派手な高級限定品より、日本製品の実用的完成度や職人の技に魅せられつつある自分がはっきり判った読書だった。
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