ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
内容は、文学・言葉・読書・ジャズ・金沢・教育・カメラ写真・弓道など。一週間に2回程度の更新ペースですが、休日に書いたものを日を散らしてアップしているので、オン・タイムではありません。以前の日記に行くには、左上の<前月>の文字をクリックして下さい。
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大学が近くだったので、授業の合間に神田神保町の古書店街をよく冷やかした。学生生活も三年目くらいになると、興味のある本を置いてある本屋さんがわかってきて、そこにいい本が入っていないか、確認作業のように行きつけだけをめぐるやり方となる。 専門を看板にしている古本屋さんは、平気で定価の何倍もの値をつける。そこにその本があることはわかっているが、そこでは買いたくない。そもそも、学生の身分でお金にものをいわせるような買い方ができるわけもない。本当に掘り出し本を探そうとすると、巡り方のパターンをハズさねばならぬ。 ある日、何気なく入った古本屋さんの棚に、安岡章太郎『志賀直哉論』(文藝春秋社)があった。すでに絶版で、あったとしても定価以上の値で売っているはずである。いくらだろうと箱から取り出しめくり始めると、中表紙に、太い万年筆で、「永井龍男様 安岡章太郎」と自筆サインがあるではないか。こういう太い線のインクづかいは、物書き特有のもの。字体的にも間違いなく安岡のサインである。値段はと見ると、定価の数割増といったところ。サイン本であることに気がつかず、通常の古書価をつけたものとみえる。おそらく、永井龍男が所蔵の書籍を処分したのだろう。それが流れ流れて、この古書店にきた。でも、店主はそれがサイン本であることを見落とした……。 私は、そこで、ちょうどの現金を用意し、本にお金をのせて奥の帳場に持っていった。包装してくれている時、サインを見つけて、「ちょっと待った。」といわれるのではないかとヒヤヒヤした。 バレることもなく本は包まれた。私は鞄に突っ込んでドアを開けた。外に出たらこっちの勝利である。ちょっと歩道を横歩きし店主の視界から完全に外れてからバンザイをした。何だか駆け引きに勝ったような気分だったのだ。 今もこの本は書棚にある。初めての経験だったのでドキドキした。今でもよく覚えている若かった頃の一コマ。
(書評・同人誌評の頁の最下段に写真あり)
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