ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2011年04月26日 :: 徳田寿秋「海を渡ったサムライたちー加賀藩海外渡航者群像ー」(北国新聞社)を読む |
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幕末期、大藩故に対応が遅く、新時代の列車に乗り遅れた感の強い加賀藩。それでも、欧米を見聞し、その経験を生かして、維新期以降、活躍を見せた人物も少なくない。この本は、そうした海を渡った加賀藩ゆかりの人物を紹介した地元出版社発行の歴史本で、著者は元県歴史博物館館長で我が恩師。前著に幕末の藩主前田慶寧についての論考があり、その流れの「列伝」とでもいうべきもの。 この本を読むと、後手後手に回りながらも、留学生の派遣や西洋船購入など、それなりに遅れまいと加賀藩も必死に動いていたことが判る。 取り上げられた人物の中では、マッチの清水誠はあまりにも有名。小生も「こども石川県誌」の人物篇を読んで、子供の頃から彼のことは知っていた。この本では、彼のように名声天下に轟くといった活躍ではなかったが、留学体験を生かし、地道に中央や郷土石川でその才能を発揮した者が多くいたことを紹介している。読んでいて、今では名も知られていないこうした地味な存在の人たちが、堅実な役職を得て、それぞれの分野で日本の発展に寄与していったことに感慨があった。何も偉人ばかりが国を発展させた訳ではない。この書には、逆に時を得ず、シベリア横断でロシアに行った人物が才能を発揮させることなく零落していった様子も描かれている。 「読み物」として書いてあるので、学問的にこうではないかと推理しているところもあるが、基本的には一般人に読みやすく、彼らが外国の文物に触れて素朴に驚く様子もふんだんに紹介されており、人物伝として楽しく読むことが出来る。 有名な遣米使節団が出発したのが、万延元(一八六〇)年のこと。彼らは大きく東回りで地球一周を果して帰国する。それから四十余年。荷風も、当時珍しかった東回りで留学に出る。荷風の時代は、さすがに最初の使節団のように、見物人が出るような「日本人珍し」の時代ではなくなっていた。しかし、だからこそ、新奇なものに驚き、吸収ばかりに腐心する「出会い期」を過ぎて、次の文化の批判的受容の問題としてアメリカを見つめることが出来るようになっていたのだということが、この本を読みながらよく判った。 彼らの苦労ありて荷風あり。
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