ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2009年11月24日 :: 美術鑑賞(2)美術展三つ |
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これも旧聞。九月、県立美術館で「古代カルタゴとローマ展」を観る。 現在チェニジア領内となっている栄光の都市カルタゴの文化を概観できる展覧会。この都市、ローマと並ぶ栄光の時代と、ポエニ戦争による破壊以後、ローマ帝国の一員として再度の繁栄を謳歌した二つの隆盛時代を持つ。 「ポエニ戦争」なんて言葉、久しぶりに聞いて、高校の「世界史」を思い出したくらいの門外漢だが、素人ながら、ローマ文化の圧倒的影響下にある、いわば、そっくりの部分と、基本、アフリカにある都市だけに、アフリカ的な土俗的な部分が融合して出来上がっていることに面白みを感じる。特にモザイク画が個性的で大きな特色になっている。
十月、「未完の横尾忠則展」を金沢二十一世紀美術館で観る。七十年代、コラージュを駆使した作品で我々世代を魅了した横尾忠則。ロック好きにはサンタナ「ロータスの伝説」や「アミーゴ」のジャケットデザインがすぐに思い浮かぶ。かなり以前、来沢し、町中で公開パフォーマンスをしたというローカル・ニュースも見た覚えがある。近年の画業のことはよく知らなかったが、グラフィック・デザイナーというより、絵筆をふるう画家として活躍していることを今回知る。 一室目のY字路の連作は、ほとんどよく似た構図ばかりだが、写実に近いもの、大胆に周囲を省略し、鋭角の家を浮かび上がらせているもの、抽象を加えたものと、一つ一つの作品の手法は変化にとんだもので、彼の意図がはっきり見えてくる。写真のモチーフとしてはよくある「分岐路」だが、並べると、そうした多彩さの実験を自分に課しているのだろうということが判る。他には、最後の部屋のアンリ・ルソーの絵の後日談を描いた連作が面白かった。各々の絵のどこかの部分に横尾が感応して、それをちょっとひねったり、デフォルメしたり、茶化したりして、見るものをニヤリとさせる絵に仕上げている。この連作、ワンパターンでは飽きる。そのユーモアの豊穣さ多彩さが勝負である。 途中の大部屋の中央に、彼の大判の日誌が開いて置いてあった。日々、思ったことを書き綴った「思い」の集積。いろいろなもの切り貼りしてあり、その日の彼が一頁に浮かび上がる。膨大な労力の積み重ねである。その文章の中に「様式を持つな」と言う言葉を見つけた。「様式にとらわれるということは束縛されるということ」といったような文面が続く。常に新しいことにチャレンジしていくことが自己のアイデンティティー、常に移ろうことにこそ自己の芸術があると考えているのだろう。この展覧会が「未完の横尾忠則」というタイトルであるのがよく理解できた。 観覧のすぐ後の日曜日、NHK教育「新日曜美術館」で、彼の特集が組まれていた。二十一世紀美術館に展示中の作品も多く、さながらこの美術展の解説番組のようで、彼の人となりを見聞きするにつけ、徐々に老境に至りつつある彼の溢れる創作意欲に触れることが出来、感心しきりの一時間であった。
十一月、金沢市立中村記念美術館にて「伝統工芸創作人形展」を観る。伝統的技法で作られた日本工芸会会員による日本人形が並ぶ。茶道の展示が多いこの小さな美術館では珍しいのではないか。お椀などに較べ、表情やポーズ、衣装をダイレクトに楽しめばよく、気分的にリラックスしながら観ることが出来た。ゴフンや木目込み、童子や踊りなど伝統的な手法・題材のものから、ドレス姿やずんぐり太った歌手の姿など、ちょっと洋風だったりユーモラスだったりするものまで多彩な作品が並ぶ。「この腰回りの太い歌手の人形、天童よしみみたいだねえ。」などという声が聞こえてきて、内心、大笑い。 昨年も十一月にこの美術館に来ている。茶室が見える日本庭園は秋真っ最中で美しく、ゆっくりお茶をたしなむ。
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