ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
内容は、文学・言葉・読書・ジャズ・金沢・教育・カメラ写真・弓道など。一週間に2回程度の更新ペースですが、休日に書いたものを日を散らしてアップしているので、オン・タイムではありません。以前の日記に行くには、左上の<前月>の文字をクリックして下さい。
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もう一冊、永井永光他著『永井荷風一人暮らしの贅沢』(新潮社)はトンボの本。こちらは今年五月の新刊である。独居人としての日常生活にスポットを当て、身嗜み、食事、愛した街、花などをキーワードに、「断腸亭日乗」の記述を基に紹介しているので、読み物としてシンプルで分かりやすい。 荷風の持ち物の写真は、永井永光所蔵のものをプロの写真家がボケ味も美しく撮し、ゆったりとレイアウトしたもので、同じものは『図説』のほうにも多く掲載されているが、あちらは切り抜きで使っていたりして、写真を楽しむという感じではない。 町並みや花写真などのイメージショットも多数収録されている。資料として古い白黒写真を多く入れざるを得ない『図説』に較べ、白黒ポートレート写真を、机の木地を耳にしてゆったり接写することでカラー化するなどの手法を用い、白黒カラー混在を回避して、堅苦しさを排除している。つまり、こっちのほうがオシャレである。 話の中心は、どうしても昭和、それも市川移住以後になるが、それもわりきりがあってよい。荷風愛好家も、日乗に頻出する食べ物の実物や、行きつけの店の現在の姿などが判って興味が尽きない。 ただ、巻末の春本「ぬれずろ草紙」の抄訳と解説は余分であった。永井永光秘蔵ということで、以前公表したものを再録したようだが、本文の流れに合わない。ちょっとサービス過剰である。 荷風の文学は、今の感覚で読むと、古めしかしくて読みにくいというのが、一般的な感覚ではないか。筋に劇的な面白さはなく、人物も類型的。豊富な和漢の詞藻と情感溢れる描写に彼の文学の真髄がある。それに、彼の生きた時代を理解した上で、彼の文明批評的立場を実感して、はじめて全貌に触れ得る。だから、読者の成熟度に合わせて、何度読んでも発見があり味わいが違う。そうした意味で、人間荷風をまず理解するというのは、きわめて正当な入り方であるように思う。 だから、この本、愛好家はもちろん、文学自体はあまり読んだことはないが、荷風という個性にはちょっと興味があるといった人にうってつけである。 私は、最近、彼の作品を読む時、電子辞書を傍らに置いている。知らない表現を見つける毎に辞書を引き、その言葉の世界に遊ぶ。荷風は、本当に豊穣な日本語の使い手だといつも感心する。 今はそうした付き合い方をしているが、老境に達し、そんな勉強的態度でなくても、作品世界、隅から隅まで全部よく判る、それ以上何をかせんやの境地になったらいいなあと思いながら、今は今で、今の境地を楽しんでいる。
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