ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2005年11月27日 :: コルコバードの丘 |
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先日借りてきたのは、ボサノバ名盤紹介本。柿木央久『決定盤 ボサ・ノヴァCD一〇〇選』(河出書房新社)。著者はボサノバで東大の卒論を書いた人らしい。 ボサノバは、昔から大好きなのだが、あくまでも「ジャズに消化された」という括弧付きの知識しかなかった。だから、ちょうどいいレベル。これが「モダンジャズ名盤入門」だったら、絶対、手に取らなかった。 私は、アメリカでのボサノバブームを作った敏腕プロデューサー、クリード・テイラーが立ち上げたCTIレーベルからジャズに入ったので、リズムとしてのボサノバは、私のジャズの森探索と共にいつも身近にあった。この本に紹介されているアルバムで、彼製作のヴァーヴやA&Mレーベルのものなど、持っているものも多い。だが、アドリブのないブラジル現地録音のものなど、コアな部分の状況はよく知らなかった。そこが判って勉強になった。 ボサノバは、ブラジルのサンバとショーロが、ジャズなどポピュラーミュージックの影響を受けて、土臭さが抜け、洗練されて出来たジャンルである。もともと、本国からじわっと広がったわけではない。一国で流行しつつあった新しいサウンドが、アメリカのマーケットに着目され、ジャズ的な要素を更に付加されて、一気に全世界を席巻したもの。アメリカ録音を商業主義と一蹴できないのが特殊なところである。ブラジルものだけを本場とあがめていると、えらく痩せた解釈になる。いかにも戦後音楽の成り立ちの雛型を見る思いである。 でも、「イパネマの娘」が入っているボサノバの金字塔「ゲッツ・ジルバルト」(ヴァーヴ)など、知らぬ人なき大名盤なのだけれど、現地主義のコアなファンから見ると、ジャズ畑のスタン・ゲッツのサックスが小うるさくて、「これは、偽物」と感ずるらしい。世の中みんな、アレをボサノバそのものと思っているのに、贔屓の引き倒しみたいな人はどこの世界にもいるようである。ジャズファンから言わせれば、ゲッツのテナーサックスのアドリブがなかったらジャズとして認知されることはなかったハズで、ということは、ボサノバが大ブームになることもなかったことになる。クリードの読みの凄さであるが、ちょっと痛し痒しみたいなところがあるかもしれない。 あれだけ大ブームだったボサノバが、本国では六〇年代後半にはさっさと下火になってしまう。そのことも知っていたが、ブラジル軍事政権が退廃的なこの音楽を弾圧したことも大きく影響していたことを、今回、初めて知った。そのため、一時期、滅んだ音楽扱いされ、本国でさえ楽譜一つ手に入らない状態だったという。 ジャズのリズムの一つとして、大抵、コンサートで一曲は演奏する。もう三十年もジャズを聞いてきた身としては、全然、そんな断絶感はなかったのだが、一九八〇年代以降、一気に復活してきたのだそうである。もちろん、そこには「癒し」の音楽として、現代人にマッチしたということがある。 私も歳をとって、ハードな音楽は敬遠気味。気がついたらボサノバリズムのCDを買っていることが多くなった。今月、まとめて買って聴いているダイアナ・クラ−ル(vo)もボサ曲が多い。 そういえば、私は、渡辺貞夫のFM番組「ナイトリーユアーズ」を毎週聞いている。そこで、ブラジルやアフリカのワールドミュージックがよく紹介されていて、ポルトガル語やアフリカ言語の曲を聞くことが多かった。それも、この本を借りようと思った遠因かもしれない。そもそも、日本に、当時最新の音楽だったボサノバを紹介したのは、アメリカ帰りの若き日のナベサダである。(つづく)
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