ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
内容は、文学・言葉・読書・ジャズ・金沢・教育・カメラ写真・弓道など。一週間に2回程度の更新ペースですが、休日に書いたものを日を散らしてアップしているので、オン・タイムではありません。以前の日記に行くには、左上の<前月>の文字をクリックして下さい。
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2006年08月09日 :: 仕事の合間のメモから |
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立て続けの泊仕事がようやく一段落し、十一日ぶりに職場に戻った。出張中、思ったことをメモした中から、二つ載せる。
草いきれ 某日、ぎらぎらした日差しの午前、白山麓の白峰村(白山市)に向かって車を走らせた。 山々の緑が眩しい。ここ数年、行動範囲が町中だけだったので、フロントガラスの視界全面が緑という景色を見たことがなかった。信号も少なく相応のスピードも出る。緑が後ろへ後ろへ流れていく。新しい山並みが次々開ける。一度人生が止まっていた私は、それを見ているだけで心が動く。 高原の公共施設での業務。標高は千メートルくらい。温度は下界より数度低く、すごしやすい。 寝場所はロッジだった。夕方、そこに荷物を置いて、緑の芝の中を、一人、本館に戻る歩みを進めていると、薄暗く朱に染まった空の彼方からカナカナの甲高い声が聞こえた。ああ、久しぶりの声と思った瞬間、今度は、草いきれがふわっと私を包みこんだ。 急に涙が出る。初めて街を出て山懐に包まれたかのような気持ちの揺れ……。 珍しくもない山間の光景なのだけれど、視覚とか嗅覚とか、感覚器にダイレクトに刺激を受けると、どうも滅法軟弱な心持ちになる。 悲しいとかうれしいとかいうのとはちょっと違う。まだまだ体は痛いけど、少しはよくなっている半病人特有の感傷的な気持ちを心に引きずっている。 本館に着くまでに目の雫は乾いた。ロビーには同僚や生徒がたむろしている。 「さあさあ、飯だぞ飯。今日のメニューはなんだろうねえ。」 いつもの雑談好きのオッサンに戻る。
朝刊の記事から 忙中閑、新聞を開く。死亡欄を読む。 ここ数年、愛読者になって、エッセイを何本も読んだ小説家吉村昭が、膵臓癌で亡くなった。七十九歳。数年前、講演会で謦咳に接し、その時はお元気だっただけに意外の感あり。 あの人らしいストイックな筆致の随筆は魅力的だった。若い頃、肺結核で生死を彷徨った話を彼は何度も書いている。誼のあった人の葬儀には必ず参列する日常の態度なども含め、あの人の文学のまなざしには、それを乗り越えた人ならではの人生観が反映されている。対象にべったりはしない。距離を置きつつ、しかし、相手への慈しみは忘れない。大人の接し方である。 彼を有名にした記録文学も、そうした彼の人生態度を反映した「義理堅さの文学」ではなかったかと思われる。 青年劇場の森三平太も同世代の七十八歳。私は何度も彼の演技を観た。軽妙な役柄に実力を発揮するタイプで、存在感があった。 「思想の科学」の鶴見和子の名も。八十八歳。祖父は後藤新平とあって、単純に驚く。自宅は京都の有料老人ホームという。晩年は住民票もそちらにして生活されていたのだろう。 立派なキャリアを積んでこられた方々。業績がかいつままれて短い死亡記事になる。 同じ紙面には、野球の王監督が胃全摘出手術より退院したという記事もあった。今年春、日本は、国際野球大会(ワールドベースボールクラシック)優勝で盛り上がった。プロ野球球団の監督をしながら、全日本の監督兼任で長期外国滞在。正直、無理をなさったのだろう。 我々は「巨人大鵬卵焼き」世代である。あの頃の子供はみんなON(王・長嶋)がヒーローだった。印刷ものでも、サイン入りボールを持っている子がいると羨ましかった。現役成績、その後の監督としての業績、申し分ない。漏れ聞くところ御人格も高潔という。 優勝で、王さん、やったあ、と思い、入院で心配する。昔の憧れの人が今も現役で頑張っている。我々卵焼き世代は、急に昔の子供の気持ちに戻って、王さん、ガンバレガンバレと思う。 六十六歳。今日のお三人よりぐっとお若い。いろいろ制限も出てくるだろうけれど、まだまだ我々に夢を与えてほしいものだ。 幼子がプールの吸水口に吸い込まれて死亡し、大見出しになっている社会面で見つけた四つの記事から。
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お願い
この日記には教育についてのコメントが出てきます。時に辛口のことも多いのですが、これは、あくまでも個人的な感想であり、よりよい教育への提言でもあります。守秘義務や中傷にならないよう配慮しているつもりです。 もし、問題になりそうな部分がありましたら、メールにてお知らせください。
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