ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
内容は、文学・言葉・読書・ジャズ・金沢・教育・カメラ写真・弓道など。一週間に2回程度の更新ペースですが、休日に書いたものを日を散らしてアップしているので、オン・タイムではありません。以前の日記に行くには、左上の<前月>の文字をクリックして下さい。
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八月上旬、金沢二十一世紀美術館市民ギャラリーAにて上記展を鑑賞。 彼の影絵は、多くの大人にとって懐かしい。保育園や幼稚園で彼の影絵芝居を見た人も多いだろうし、昔、テレビの子供向け番組でもよく彼の影絵をやっていた。一部分が可動するのが紙芝居と違うところで、どこが動くのだろうとじっと見ていたものだ。大人になって勤めた学校の教材庫に彼の動く影絵教材が置いてあって、懐かしく思った覚えもある。 彼の描く人間は、黒い顔にくりぬいた大きな目が特色で、彼の名を知らない人でも、この特徴的な目を見たら、ああ知っていると思う人も多かろう。数年前、彼の仕事を紹介する番組を観たことがあり、そこで、昔ながらの裸のカミソリを使って紙を切っていく作業を紹介していた。ご高齢にも関わらず、今も精力的に創作に勤しんでいることに感銘を受けた覚えがある。 彼の作品は、スタート当初はモノクロだったが、テレビのカラー化に伴って途中からカラーとなる。以降の色彩のカラフルさは影絵ならではで、光を透過した原色をふんだんに使った「色」の持つ力強さで我々の視覚に訴える。子供向けの素朴な童話や民話の挿入画レベルのものを想像していたので、いい意味で、そのパワーに裏切られた。 こびとや猫のモチーフが彼のトレードマーク。親しみやすく、カルピス社依頼の作品などを観ると、商業イラストレーターとしての発想力・デザイン力にも感心する。いくつかの作品に凝らされた水面の揺らぎを使った展示方法や、鏡を巡らせて広々と絵を見せる手法も効果的で、幻想的なイメージを助長させていた。 大きいとは言えない会場を、うまく区切ってディスプレーされていたし、説明プレートにある本人のことばも臨場感がたっぷりで、プレゼンテーションの巧さも感ずる。作品をうまくパッケージングして見せるブレーンの商業的手腕も褒めなければなるまい。各地で開催される毎に、その土地の景色を新作として追加するなどというのはそのひとつの例。来場者は、その配慮に感激する。 頑迷なアカデミズムからは遠いのかもしれないが、子供から大人まで理屈なくファンタジーの世界に入り込んで楽しみ、影絵が好きになる。そんな色と光と影が持つ美しさを際だたせていて、本当に楽しい時間を持つことが出来た。 各地で多くの観客を動員しているようで、後でネットで人の感想を幾つか読んだが、皆、心から満足している方ばかりだった。 私は彼の絵を観ながら、「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげるを想起した。扱う題材は大きく違うが、リアリズムとは対極の「幻想」を描くと言う点では共通しているし、ご高齢にもかかわらず精力的に仕事をされている表現者という点でも共通している。 お二人とも同じ世代。藤城は大正十三年(一九二四)生まれ、水木は大正十一年(一九二二)年生まれ。こびとが出てくるファンタジーと妖怪という違いは、東京生まれの慶応ボーイと、山陰境港出身、学歴的にも転々とし且つ戦争で辛酸をなめたというお二人の経歴の違いが大きいのではないかと思った。 いずれにしろ、羨むべき晩年である。
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