ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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有形文化財登録申請の件で、建築学の先生が実家に検分に来られた。丸窓に半畳の床の間、その横に半畳の仏壇がある一階和室の造りを観て、「モダンですね。」と言われる。誰が見ても典型的な和の空間で、何がモダンなのか判らなかったので、なにがですかと質問すると、通常、別にしっかりした床の間のある家は、仏間は仏間として使い、こうした同居はしないものなのだという。一緒にしてしまうのは最近の住宅事情ではよくある事例だが、当時では珍しいという。 他に、一階と二階がストンと同じ間仕切りになっているのも珍しいという。通常は、茶の間は一階、各人の部屋は二階という風に各々の部屋の役割があるので、上と下では部屋の割り方が違うものらしい。言われてみれば、我が家は、玄関上がった横の洋室の上階にはまったく同じ造りの洋室がある。天井縁が左官のモルタルコテ細工で装飾されているのも一緒。同様に、一階の仏間と控えの間も、まったく同じ割り方で二階に客間と控えの間がある。 祖父は県の建築技師で、当時の公共施設の設計を専門としていた。おそらく民間住宅の設計はこの家ただ一軒である。なので、自分の家も、これまでの自分の仕事と同じ手法で建てたのだろう。見た目、洋館仕立ては外構と内部の数室のみで、基本、和風の典型的な和洋折衷建築ではあるが、基本設計に洋室的なシンプルな割り方を採用して、本来、公共施設ならそのまま上下階すべて同じ洋室にするところを、一般住宅なので多くを和室にしたつくりになっているのだ。つまり、和風建築に洋をプラスしたのではなく、洋風建築に和を大幅に取り入れた仕様。見た目完璧に和室でも洋室の匂いがするというのは、この間取りのせいである。建物の外観も、大雑把に言えば四角い箱に台所水回りセクションの出っ張りがついているというシンプルな造り。先生は「昔の役所の建物のような設計」という言い方をされていた。 もうひとつ、「昭和初期の和洋折衷建築というより、明治の洋館の匂いがしますね。」とも。祖父は明治二十年代初めに設計を学んだ。その頃の日本は辰野金吾をはじめとする日本人技師がお抱え外国人技師にかわって活躍し始め、積極的に洋館を建てだした時代。明治の青年は、そうした洋館に憧れ、積極的に吸収していったことだろう。家には、勉強のため各地の洋館を撮した写真帳が残っている。自身の仕事もこの流れを汲む洋館がほとんど。 言われてみれば、いちいち納得することばかり。素人は洋室だけがこの家のチャーム・ポイントと思っていたが、設計思想や基本設計にちゃんと自己の出自が織り込まれている。ここで長く生活している家族はそんなものと慣れきっていて全然気がつかなかったが、今回の指摘で、祖父の仕事の趣味嗜好を身近に感ずることができて、感慨深いものがあった。
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