ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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以前、石川県社教センターで聞いて以来二度目の藤原正彦。あの時は「国家の品格」がベストセラーの真っ最中で、話の途中でも、聴衆は「我が意を得たり」と思う時には拍手をしていて、同じ信条の人達が集まった講演会という感じだった。現在はお茶の水女子大学を退官し、名誉教授の立場。読書指導のようなことをされているようだ。 講演は、エッセイと同じく極論のような言い方をして衆目を集め、持論を展開する物言い。私自身、数冊の著書で彼の立場は知っているので、取り立てて新鮮味はなかったが、子供たちは、これまでの大人の言うこととまったく違った意見だったので興味深かったようだ。ユーモアも文章同様ところどころに発揮し、飽きさせない。スポーツについて質問した子に対して、私も学生の頃はサッカー部でして「西の釜本、東の藤原」と言われておりましたと切り出してどっと受けていた。 「小学校で英語を教えることに国民は八〇%以上賛成しているが、とんでもない。まず国語である。週百時間あるというのなら賛成するが、週二四時間しかないのだから、英語を勉強する余地など一切無い。」とする彼の発言は、「一に国語、二に国語、三四がなくて五に算数」とする彼の立場から考えると当然の意見だが、実際に英語特区となっていてこれまで小学校から英語を学んできた金沢市内出身の子供達には、「あの時の勉強はなんだったんだ、大人は間違っていたのか。」と、結構インパクトがあったようだ。 「美的情緒力」を強調し、すべての学問はそれが必要、日本はそうした方面は異常なほど発達した国なので、その力で日本再生どころか世界から尊敬を受けることができるというのが趣旨。 質疑応答で、「「国家の品格」を読んだが、疑問がある。コスモポリタニズムではいけないのか。」というものがあった。しっかり読んだ上での質問で、いい質問であった。藤原は、他国のことを思いやるにはまず「家族愛・故郷愛・祖国愛」が必要で、それができて初めて世界を愛することができるのだと答えていた。 おそらく我々世代以上には、どんなに国際的になっても、世界の単位は「国家」であるという意識がある。特に戦争を経験した世代は当然の認識。平和な時は、コスモポリタニズムでもインターナショナリズムでも問題ないし有効でもあるが、一旦緩急あれば、結局、国単位発想にさっさと戻ることを身にしみて知っているからである。以前、ライブドアのホリエモンが脚光を浴びた時、その拝金主義の背後に国家なんか重要ではないという国家軽視発想があることを感じて危惧したものだ。戦後、保守思想の増長を恐れて、国について強調しない教育をしつづけた結果、子供達は国の観念がどんどん希薄になっていったのだろう。その結果、「国家の品格」を論ずること自体、重要ではない気がして違和感があるのだろう。そんな今の子の「常識」が背後にある質問だと思った。
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