ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2005年06月09日 :: 読書会のテキスト選び 山田詠美「ひよこの眼」を読む |
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図書室にいると、生徒が、「人から薦められたんだけど、この本ここに置いていない?」と聞きにくる。司書の先生は、ここにあるものは、どこに置いてあるかすべて知っている。ないものは検索して、テキパキと指示している。さすがは専門だなと感心させられる。国語の教員は、教材関係、研究分野、自分の趣味の分野については詳しいものの、最近の話題本、生徒が興味をもつような分野の本は、意外に疎いものである。 ここ2か月、本校の図書室で貸し出しが多かったのは、小川洋子『博士が愛した数式』(新潮社)、ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』(角川書店)。人気衰えずのものは、綿矢りさ『インストール』(河出書房新社)、片山恭一『世界の中心で、愛を叫ぶ』(小学館)など。すべて私は読んでない。 老作家の随筆ばかり読んでいるようではイカンな、と反省。でも、少しだけ。 先日、生徒が聞きに来たのは、「ひよこの眼」という作品。他校の友人が勧めてくれたのだという。灰谷健次郎『兎の眼』なら知っているけどねえと、大人は答える。ネットで検索すると、山田詠美の短編ということが分かる。『晩年の子供』(講談社1991)所収の短編で、高校教科書(2年配当)にも載っているそうだ。教材研究のサイトに本文が載っていたので、私はそれで読むことができた。(ただ、全文アップしてあるけれど、いいのだろうか。著作権法上問題がありそうだ。) この部屋の大人は、集団読書会用のテキストを探していたところなので、そうした営業目的(?)で読んでみる。 転校生の寂しげな目に惹かれた女主人公は、周囲に冷やかされて仲良くなる。ある日、彼の目が、以前、飼って死んだひよこの眼と同じだと気づく。まもなく、彼は父親の無理心中の巻き添えで死亡。しかし、彼女はいつかそうなることがわかっていたような気がしていたというもの。 文化祭の委員を決める時に、クラスメイトから茶化されて……と、どこにでもありそうな高校生活が活写されており、この年頃の女の子の心情を描いたら山田詠美はピカイチである。 『ベッドタイムアイズ』(河出書房新社1985)で世に出て以来、ああした男性との性の交渉を中心にした作風の作家といったイメージしかなかったので、高校生の日常生活を描いた作品が入試や問題集に頻繁に採られるようになって、彼女の作風の変化を知った。高校国語教員は、こうした形で情報を仕入れることが多いのである。 私がよく使うのは、短編小説「スイートバジル」(『放課後の音符』新潮社1989)からの出題(「小説問題の解法」桐原書店)である。 幼なじみに恋をして、これまで通りのフランクな関係を維持できなくなった女主人公の心理を描いて、これもうまい。絶対高校生を引きつける話題である。今では、私にとって、彼女は、女子高校生ものの作家といったイメージになっている。 さて、この「ひよこの眼」も、読書会用のテキストとして、取っつきは絶対にいい。ただ、問題は討議の内容が深まるかということ。高校生の恋愛というテーマなら盛り上がるだろうけれど、肝心なモチーフの「死の予感」に話が深まった時に、どういう反応が返ってくるだろう。元気な盛りの彼・彼女たちである。実体験があるはずもないこのモチーフに、実感として自分なりの意見を展開できるか、ちょっと疑問のところもある。 彼ら流にいうと、ちょっと「微妙〜」。ということで、現在、保留中。
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