ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2006年01月07日 :: 映画「ALWAYS 三丁目の夕日」(東宝系)を観る |
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私の学生時代からやっている西岸良平の戦後文化回顧漫画の映画化。昭和リバイバルの一つである。各映画賞も総なめにしたそうで、それならと、四日夜、仕事が忙しくなる前に駆け込みで鑑賞した。一日一回の上演に縮少されていて、そのため満席だった。 東京タワー建設中の昭和三十三年、我々夫婦が生まれたころを舞台にした、あの頃を知っている人にとっては、無性に懐かしい風景。琺瑯(ホウロウ)の看板、オート三輪、駄菓子屋。これでもかという具合に出てくる。 そこに繰り広げられる、濃密なご近所づきあいの人情話。 戦争に生き残ったことを原点にしている自動車修理工場の親父、戦災で妻子を亡くした医者など、あちこちに戦争の影を引きずっている。直接、戦争に関係がなくても、当時の社会の不成熟さのため、父の入院費のために身売り同然で姿を消す飲み屋の女や、たらい回しにされる妾の子、集団就職で親元を離れた住み込み女工など、今ならもう少し何とかなるはずの、苦しさも背負って、それぞれが生きている。 そうした意味で、昔はよかったとは絶対に言えない時代である。 ところが、若い人の感想を読んでいると、昔の人は人情が厚くていい時代だったというものがほとんど。ご近所さんの心の通い合いが濃密であるという意味では、確かにそうだが、こんな狭い地区で、こんなに不幸を背負っている人ばかりいるということも考えないといけない。 おそらく、若い人は、三種の神器を買い、町工場を大きくする夢を素直に信じて邁進している主人公一家を見て、希望に満ちあふれている時代だと思ったのだろう。それはそうだが……。 どっちの時代も、どっちもどっち。いいところもあれば駄目なところもある。あのころは、戦争のキズもあったし、物もなかった、でも、みんな助け合っていた。対して、今は、戦争を意識することもなく、物は溢れている。でも、人の関係は切れてしまった。 次の日、読んだ小論文の文章(慶応大二〇〇三年度)。出生率の低下、平均寿命ののび、未婚率・離婚率の上昇によって、一〜二人世帯が日本全体の半数以上を占めるようになり、両親と子供をユニットにする家族のほうが少数派になってきていることを指摘し、これまでの子育て中心のライフスタイルが揺らいでいると報じている。こうした新局面に対処するには、一、再び、家族中心主義に戻るか、二、家族に代わる新しい社会関係を構築するかを考えないといけないと結んでいる。 生徒が持ってきた答案は、「前者は、女性に負担を強いるものだから絶対反対。現代は、女性の社会進出が盛んで、よい傾向。一人一人が目標を持って充実した生活を送ればよい。」というもの。 社会の中で、家族という人間関係が切れて、問題が山積になっているのをどうするかということを問うているのに、「女性の社会進出万歳」では的はずれである。女性の自立という命題が、現代っ子にとって考えなしのステレオタイプになっていることが見て取れる。この小論文で、女性論、現状肯定論では、不合格である。 そこで、私は、映画の内容と家族愛の復権を願う多くの人の感想を語り、個として断ち切られている現状をどうすべきか、いいアイデアがやすやすと生まれてこない以上、一が、ばっさり捨てられてしかるべきものではないことを強調した。 映画の翌日に、人間バラバラで、先行きたち行かなくなるという現実を分析した文章を読み、その対比に思いを致している時に、「それでいいじゃん。」みたいな答案を読まされて、結構、エキサイトしてしまったのである。ちょっと、彼女にきついことを言ってしまったかもしれない。(つづき)
(上の画像は公式ウエブサイト提供無料壁紙を転載。下は映画館屋上駐車場からの景色)
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