(「カメラ道楽」の項に載せるために書いた文章です。「番外編」として、臨時にここにも載せ、時期を見て削除します。カメラに興味ある人向けの文章です。)
平成18年春期、全メーカー通じて最安値のデジタル一眼レフカメラゆえ、多少の省略はあるが、同社銀塩から乗り換えてみて、デジタルだからという不満は一切ない完成度の高いモデルである。コストパフォーマンスはきわめて高い。 お任せモードも、オートピクチャー、各種シーンモードと豊富で、初心者に優しいだけでなく、ベテランが操作したい部分も、すぐに設定変更できるようになっている。初級者から中級者まで対応は万全である。
操作は、ペンタックス愛用者には、MZ-3シリーズではなく、おおよそ、MZ-7シリーズのフィーリングであると言えば分かり易いと思う。 測距点は5点と、最新の10以上あるものと較べて少ないが、中央で合わせて、カメラを振る、昔のやり方が身に染みついている者からすると、充分なくらいである。花の撮影などでは、多点が邪魔をして、手前の花びらに合ってしまうことも多く、本気撮影の時は中央1点にして撮っているので、多いほどよいにはちがいないが、実用上、これで充分である。 ピントの合ったところを赤で知らせてくれるスーパーインポーズ機能は、便利で安心感があるので、省いたのは、初心者向けということを考えると、残念な部分ではあるが、昔のAFには、そもそも、そんな機能はなかったし、ファインダーは、デジタルにしては見やすいほうで、問題は少ない。
それより残念なのは、ストロボがP-TTLしか対応していない点で、一つ古い世代のTTLを制御してくれないことである。一眼を初めて買う者をターゲットにしている関係で省略した部分だが、このせいで、私は購入をかなり躊躇した。外部ストロボを使いたくなったら、最新式を買えということで、覚悟がいる。
操作感では、露出補正が面倒である。シャッター手前のボタンを押しつつ、ダイヤルをまわさねばならない。撮影途中に急に変更した時など、右手の指二本を同時に動かさねばならいので、これは独立したものがあればよかった。また、ファインダー内の情報では、露出補正の値が、撮影枚数表示と兼用なのがちょっと困った。軍艦部の液晶で枚数は確認できるので、さしあたりは問題ないが、目を一度ファインダーから離すことになる。 このカメラには、プレビューを液晶で確認できるデジタルプレビューというユニークな機能があるが、これも、いちいちファインダーから目を離さねばならないという理由で、従来型の光学プレビューのほうが、断然、使い勝手がいい。私はそちらに設定している。 一眼にも、最近は、手ブレ防止機能付きのものが出てきているが、この機種は、感度200が標準なので、銀塩よりシャッター速度が稼げるくらいである。望遠中心の人にはあると便利な機能だろうが、標準ズーム域で撮影している人には、なくてもあまり困らない。趣味なのだから、せっかくの一眼レフ、ちゃんと構える練習をすべきなのではとチラリと思うくらいである。 それより、CCDゴミ付着対策が何もなされていないほうが恐ろしい。野外でのレンズ交換はしないようにしているが、一眼の楽しいところに水をさしている恰好なので、多少、コストが上がっても、対策が必要ではないかと思う。
600万画素というスペックが物足りない人もいるだろうし、詳しくない人が見ると、それだけで購入対象からはずされそうだが、コンデジとCCDの大きさが全然違う。別物である。現状、中級までなら、これで充分。というか、むしろ扱いやすい情報量で、変に背伸びをしていない、好感のもてる選択であると思う。 AFの駆動に関しては、おそらく従来の部品そのままなのではないだろうか。十年以上前と、動きがほどんど変わっていない。ペンタックス愛用者には親しい動作だが、キャノンの、すっと合う速さなどと較べると、明らかに劣っている。
いくら鮮やかモードでも赤色だけが突出して鮮やかすぎるのではないか、液晶の視野角がちょっと狭い、記録サイズにWEB用の極小サイズがない、ボディの厚みをもう少し薄くしてほしいなどの細かい不満はあるが、電池は単三型、メディアは、今、もっともコンパクトデジカメに使用されているSDカードと、一眼レフとして、とびきり敷居が低く、コンデジからのランクアップには最適である。ネット上の購入者レビューを見ても、高評価。満足度は高い。
最近のレンズ製作予定のロードマップなどを見ると、魅力的な単焦点薄型レンズがラインナップされており、ペンタックスとしては、軽いお散歩一眼を狙っていることが窺われる。今や、ペンタックスの一眼市場のシェアは10パーセントしかない。正攻法より、ニッチで生き残ろうというのだろう。パワー重視のお仕事用、万能タイプでは、キャノン・ニコンに勝てないが、趣味の人に愛されて、お金を落としていただく製品を作っていこうという戦略である。
それにしても、こんなに安くて使いやすい一眼レフはない。コスト的に大丈夫かと思うくらいに頑張っているのに、爆発的に売れないのが不思議なくらいである。 新聞の一面広告を平気で連発する会社の規模、宣伝上手。それに、消費者の寄らば大樹の陰的発想など、一度、上手くまわりはじめると、多少の欠点があっても、ブランド力で売れてしまう。それを、ペンタックスのような小さな企業が崩すのは至難の業である。 7月には手ブレ防止機能付き入門機が、秋には、オーバー1000万画素の中級機が出る。デジタル移行でもたもたしていて、大丈夫かと思っていた時期もあったが、ちょっと、最近、元気になっている。 ミノルタの一眼レフ資産を大会社ソニーが買って、ソニーブランドの一眼レフが攻勢をかけはじめる直前のこの時期。嵐の前の静けさで、見通しは決して明るくないが、判官贔屓の私は、(というよりKマウントの交換レンズがあるので、否が応でもといったほうがよいが)、がんばれペンタックス気分である。(2006.6.3)
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