ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
内容は、文学・言葉・読書・ジャズ・金沢・教育・カメラ写真・弓道など。一週間に2回程度の更新ペースですが、休日に書いたものを日を散らしてアップしているので、オン・タイムではありません。以前の日記に行くには、左上の<前月>の文字をクリックして下さい。
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私が子供の頃、八番ラーメンというラーメン店が片町の裏通りに出来て大人気となった。もともとは国道八号線沿いの店が発祥の、野菜たっぷりサッポロ系で、店屋物のシンプルな中華ソバしか知らなかった金沢人に受けて、まさに席巻という言葉がぴったりなくらい市内にお店を展開した。今もファミリーレストラン的形態ではびこっていて、値段も安く、子供連れの家族がラーメン屋に行くといえばまずここである。 そんな無風地帯にも、近年、大都市圏で名を上げた店がどんどん上陸してくるようになった。しかし、数年で潰れていく店も多い。金沢の人は物見高いので、最初はどっと繰り出すのだが、後は閑散としている場合が多く、飲食業界では難しい土地柄として有名らしい。あるブログで、金沢の子供は、この店でラーメンを覚えたので、なんだかんだ言っても、この店の味に還っていくからではないかという分析をしていたが、成る程と思わないことはなかった。 ここのところ、「外出しようプチグルメ」シリーズということで、金沢南部のラーメン屋さんに軒並み入って味見している。十軒は新規開拓した。 そこで、感想を。 正直、ほとんどのお店、感心しなかった。 まず、どの店も味付けが濃すぎる。金沢の薄味文化の味覚に合わない。それに汁の風味があくどい。ここは、ぷうんとわざとらしい鰹風味、ここは、ねっとりしすぎのとんこつ。麺も、ここは無理矢理縮れさせた感じ、ここはいくら何でも異常にかたい、ここは何でこんなに細いんだ、素麺じゃないんだから……。 特色を出そうという努力が見え見えで、これでもかという自己主張。よくいえば、「こだわり」なのだろうが、麺と汁とで出来ているだけのシンプルな食べ物にやりすぎである。つまり、B級グルメが過熱すると、手のこんだ日本料理やフランス料理と違って努力のしどころがなく、こんなことになるのだろう。 夫婦で麺をすすりながら、どう、ここのラーメン? うん、マズくはないよね。まあ、ラーメンだよね。という意味のない会話が何度も繰り返された。 それに、ちょっと、全体的に割高である。同じ料金出すなら美味しい定食屋さんに行ったほうがいい。 いくら行列のできる大人気のお店の系統を引くと箔を付けても、これでは潰れるわけである。 ただ、薄味の金沢だけの状況かと思っていたら、先日、東京の落語家さんが新聞で同じような不満を書いていた。きつい味付けでインパクトを狙っているだけだと言うのである。 それを若者が感じているかどうか。そんなものとして受け入れてしまっているのではないか。 結論。現代の食文化はなんだか病的である。今に、ガツンとこなければ美味しくないなどとのたまう輩が大量発生するのではないか。世の中、文字文化は確実に崩壊しつつあるけれど、大盛況の食文化も先行き怪しいものだ。
(写真は、若者に人気で、都会から出店してきたお店の叉焼ラーメン)
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