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ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。

 内容は、文学・言葉・読書・ジャズ・金沢・教育・カメラ写真・弓道など。一週間に2回程度の更新ペースですが、休日に書いたものを日を散らしてアップしているので、オン・タイムではありません。以前の日記に行くには、左上の<前月>の文字をクリックして下さい。

 

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エキサイトブログ 「金沢日和下駄〜ものぐさ〜」
           
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 2005年04月27日
  現場の力が落ちている   尼崎の列車脱線事故に思う

 一昨日、尼崎で列車脱線事故があって、今も大騒ぎしている。車輌が無惨にへし曲がり惨状極まりない。事故原因が特定できておらず、置き石説も有力なので、今のところ、何ともいえないのだが、前駅でオーバーランして、1分半の遅れを取り戻そうと、この運転歴1年に満たない運転手は、あせって、通常よりスピードを出していたことは間違いないようだ。
 3月は、土佐くろしお鉄道がオーバーランして駅に突っ込む事故が、その2週間後には、東武線竹の塚で、手動遮断機を間違って上げ、死亡事故があったばかり。
 鉄道ばかりではない。飛行機が許可なく離陸しようとして、あわや大惨事などの日本航空のミスも立て続けにあった。
 この日航の事故の時、テレビのコメンテーターが「最近の日本は、現場の力が落ちてきているのではないか。」と指摘しているのを聞いて、この「現場の力」という言葉が耳に残った。
 例えば、今回の事故の路線。私鉄との競合路線で、私鉄より速いことが売りになっていたという。昔は、列車の数分の遅れなど誰も気にしなかった。誤差のうちくらいに思っていたものだが、いつの間にか、正確無比が当たり前の世の中になってきていた。
 2週間前には、尼崎地区でJR西日本が、1秒単位の遅延状況調査を実施していたという。勤務実態調査や評定資料として利用することも可能な訳で、23歳の青年には、そうしたことも、プレッシャーになっていたろうと思う。
 機械のように正確。でも、動かしているのは人間である。
 踏切を間違って上げた係員もそう。開かずの踏切で待っている歩行者によかれと思ってしたフライングがこういうことになった。第一、時々しか来ないなら兎も角、何本もの線路が走り、過密ダイヤで右に左に行き来する列車を、人がミスなくさばくことのほうが神業のような気がする。人間がミスをしても、事故につながらないシステム作りこそが必要で、彼一人に全責任を負わせて終わりにならなければいいが……。
 日航のミス続きも、日本エアシステムとの合併で、ゴタゴタが続いていて、そちらで神経がすり減っていたためではないかという指摘もあった。

 現場での人的な「スキル」が落ちてきているということがまずあるかもしれない。
 楽器製作メーカー、ヤマハの取り組み。ピアノの製作には、職人芸的な勘に頼る分野がかなりあって、担当する団塊の世代の職人さんが、数年後から大量に退職になるという。このままでは、これまで通りのレベルの製品を維持できない虞れが出てきたので、今、そうしたマイスターの下、直接、若い社員がマンツーマンの指導を受け、技術の伝承を受けるシステムを作ったという(NHK「クローズアップ現代」より)。
 これなど、対策がとれたいいほうの例だが、物を作る職人の世界だから、ある意味、はっきりしていたのであって、普通の仕事ではそうではあるまい。自然に後任につながっていくものと放置されていているのが現状ではあるまいか。その結果、本当によく知らない人が増える。つまり、文字通り「現場の力」が落ちたのである。

 だが、多くは、人的能力が落ちたわけではないにもかかわらず……という場合ではないだろうか。
 時間的にも精神的にも余裕があって、はじめて全体が見通せるものである。過剰な、かつ空疎な仕事が、メインの仕事を蹂躙するように入ってくると、能力のある人たちの集団でも、その目先の対処に追われ、本務が疎かになる。多くの仕事人は、もちろん、疎かにしたくないので、個々人で誠実に対応しようと努力はするが、もう精一杯である。問題が起こらないように、最小限の努力で安全をある程度保つ、そのバランス点を考えはじめる。安全度は極端には下がらないが、少しは確実に落ちる。
 これは、安全ばかりでない。努力と効率の妥協点、少ない効率・多くの業績。どんどん、そうした視点で仕事をこなすようになっていく。
 全体を見通す力が組織全体として落ちて、硬直化するのも、同様である。全体で考え、どういうやり方が現場としても、経営的にもよいのか、検討して、その納得の上で運営していこうという力がなくなり、現場を知らない指導者が、外圧や、現場人間性悪説の論理で、一方的に、現場を締め付ける。しまいに、現場の声は死んでしまい、誰も声を発しなくなる。諦めムードが漂い、ため息まじりに、唯々諾々と追従するだけの現場になってしまう。「やれといわれれば、給料もらっている以上、やりますけどね」という態度である。現場で事故がおこるのは こんな時である。

 さて、我々の教育現場はどうか。年功序列が崩れ、能力主義が導入された。人事考課制度も試行中である。生徒による先生評価アンケートでも我々は査定される。うかうかしていられない。業績をあげなければ……。あくせく、あくせく。で、結局、疲弊するのは生徒たちのほうである。
 それにしても、本当に教員は忙しくなった。生徒とゆっくり有意義な(?)無駄話をする時間的余裕がなくなってきた。それだけで、結構、不登校などの問題も少なくなるのではないかと思うのだが……。私自身、十数年前は、結構、部活に顔を出していたのだが、最近めっきりそれが減っている。問題勃発の危険性は増大中である。結局、「現場の力」は、この業界でも、めっっきり落ちているのである。

 今回の事故。事故は事故である。直接の原因が究明され、対策が打ち出されるだろう。だが、それが、根本にある問題に対する対応をなおざりにし、対処療法だけのものであったら、逆に、なおさら現場をやりにくくするだけのものになるのではないだろうか。今から心配である。

 

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お願い

 この日記には教育についてのコメントが出てきます。時に辛口のことも多いのですが、これは、あくまでも個人的な感想であり、よりよい教育への提言でもあります。守秘義務や中傷にならないよう配慮しているつもりです。 もし、問題になりそうな部分がありましたら、メールにてお知らせください。

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