ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2005年05月14日 :: 看護師Tさんのこと(入院話題7) |
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そういえば、私の入っていた病院は、なぜか若い看護師さんが多かった。中年の方のほうが稀。みんな若い女の子ばかりなので、その中で、誰がベテランなのか、最初は分からなかった。でも、AさんがBさんを「先パ〜イ。」と呼んでいて、ああ、Bさんのほうが年上(化けていても実はオバサン)だなと、ちょっとずつ、私の頭の中で、病棟内人物関係図が出来上がっていった。 その中で、一番若い子は、今年度、看護師さんになったばかりのTさん。入院当日にお世話をしてもらったので、一番最初に名前を覚えた。初対面で、ニコニコと妙に明るい。でも、ちょっと明るすぎるかも……。(^^;) なぜって、会ったばかりの私に、最近、彼氏と別れたなんて話をするんだから……。これ、リハビリの日程説明の時、3月14日はホワイトデイだという話になり、でも、私はクッキーがもらえないという話になって、飛び出した発言なのである。人を無垢に信ずる、すれていない良い子だなとはすぐに思ったけれど、何分、こちらは、これから入院・手術で、気分的にあまり明るくない。人の失恋に興味を示すほどの余裕はないのである。 「これから、あなたが私の担当なのですか。」と尋ねたところ、「ちょくちょく病室に顔は出しますが、担当看護師ではありません。」という。どういうことかなと思っていたが、後でだんだん分かってきた。彼女は新米で、まだ、直接の医療行為はあまりさせてもらえず、食事の世話、お風呂の介護などが仕事の中心なのであった。「早く後輩がこないかなあ。」と言っていたので、あと1ヶ月で先輩になり、正規のローテーションに入るのだろう。 最初の患者調書で、私の年齢を聞いて、「ああ、父と同い年で〜す。」と言われ、かなり凹んだ。今、生徒さんの親御さんが、ほぼ、私と同世代である。もう社会人になっている人から言われたのは、これが始めてで、ちょっとショックだった。(計算したら、お父さん二十三歳の時の子である。) それにしても、彼女のノリは、私のメシの種である生徒さんの、その中でも、特に明るめタイプの子と変わらない。廊下の向こうの方で私を見かけると、大袈裟に手を振ってくれる。入院患者さんに手を振る看護師さんというのもちょっと珍しい。 ただ、そんな子なので、細かいこと聞いてもよく分からないし、ミスがやたらに多い。放送で、朝、「昼食の用意ができました。」といったり、ベッドまでやってきても、一度で用が済んだことがない。大抵、忘れ物をナースセンターまで取りに帰る。 「私の患者さんは、患者さんのほうがしっかりしてきますから……。ハハハハハ。」 うーん、ちょっと問題である。安心して彼女のいうこと聞けないではないか。この子、看護師さんとして、ちゃんとやっていけるだろうか、ちょっと心配になった。 例えば、彼女が大声で、例の忠臣蔵のKさんと話している。大部屋なので、みんな聞いている。 「わたし患者さんって好きよ。子供の頃から、私、高齢者の方が好きだったから。」 そこにいたのは、七十二歳のKさん、同い年の方もう一人、六十代はじめの方、四十代後半の私。四人とも、自分を「高齢者」だなんて思っておらず、バリバリの現役だと思っているので、自分たちが要介護のお年寄りみないな言い方をされて、一瞬、微妙な雰囲気になった。彼女は、もちろん、親愛の情を示したつもりで言った訳で、そんなことは皆よく分かっているので、誰も咎めたりはしない。でも、ちょっと、みんな凹んだことには気がつかないのだった。若い彼女の目からみたら、みんな「じいちゃん」。十把一絡げで「高齢者」の範疇に入ってしまうのだろう……。 ある時、彼女が私に注射を打つことになり、しゃがんで私の左手をもぞもぞやっている。その時、小声で「マジ、ヤバ。」というのだ。日本語に翻訳すれば(?)、「これは、冗談ではなく危険な事態である。」ということになる。 どきっとした。 なにが起こったのだ。なにを失敗したのだ。と焦ったが、何のことはない、静脈に針がうまく入らなくて、悪戦苦闘しているだけなのであった。 お〜い。Tさん。医療行為中に、患者さんが不安になるような言葉を発してはいけないよ。 でも、そんな彼女の発言の中で、 「看護婦さんって、いい仕事ですよね。ひとのためになる仕事ですから。」という一言だけは、今も、輝いて私の記憶にある。 この子は自分の仕事に誇りをもっている。そして、年寄りは、話しているうちに、お孫さんか親しい親戚の娘さんがお見舞いに来てくれたかのような嬉しい気分になってくる。 彼女には、ちゃんと「看護のこころ」があるようだ。 人よりちょっと一人前になるのが遅くなるかもしれないけど、でも、大丈夫。彼女はきっといい看護師さんになる。 さて、実は、てっきり異動になると思っていたし、退院が25日にずれ込むなんて思ってもいなかったので、24日の離任式の壇上で何を話すか、入院中ずっと考えていた。彼女の様子を見ていて、この子の話をしようと思い、話の流れまでベッドの上で考えていたのだった。この話は、いわば、ボツになった幻の生徒向け「離任挨拶」要旨である。
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