ものぐさ 徒然なるままに日々の断想を綴る『徒然草』ならぬ「ものぐさ」です。
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2005年05月31日 :: 「漫画を読む力」が落ちている |
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最近、CDショップに行って思うこと。 昔は、日曜日ともなれば、レコード店は高校生で一杯。大枚はたいてLPレコードを買い、学校に割れないように、専用の布袋に入れて大事に持っていって、友達と貸し借りしていたものである。お小遣いの大半はレコードで消えた。 それが今、閑散としている。客は中年ばかり。もう、若者はCDにお金を落とさない。音楽業界も、中高年にターゲットを絞った企画で、これ以上の顧客の減少を食い止めようと必死である。かつての名盤が廉価でシリーズ化されたりしていて、価格的に輸入盤とほとんど変わらなくなり、では、国内版を買おうかということになる。私は典型的にこっちの組である。 同様に、子供や学生さんといえば、漫画ばかり読んで……という図式も過去の話のようだ。漫画本コーナーには、もちろん今でも子供らがたむろしているが、以前ほどの賑やかしさはない。漫画自体に、昔ほどの執着はなさそうなのである。お金を払ってでも読みたい魅力のあるメディアでなくなっているということだろう。 時々行く工業大学近くの郊外型書店のコミックコーナーは、当然ながら、大きなスペースを占めているが、ビニール包装されていて立ち読みが出来ないこともあり、いつ見てもほとんど人が立っていない。 第一、今、爆発的大流行のコミックというものも寡聞にして知らない。 どうやら、子供たちは、漫画を「読解する力」さえ落ちてきているようなのだ。どうもそうなのではないかと、同僚に話したら、先日の「朝日新聞」に記事がでていたという(残念ながら未見)。
私も、若い頃、多少、漫画を読んだ(見た?)。小学校のころは「サイボーグ009」「サブマリン707」など。中学高校では、これと言って読んだものが思い出せない。もともと「漫画人間」ではないのである。 ところが、大学に入ってからは、友人から借りた「男おいどん」「パタリロ」、銭湯に置いてあった週刊漫画雑誌連載の「うる星やつら」などを楽しく読んだ。今考えると、大学生の時が一番読んだような気がする。これ、やはり、ご多聞に漏れずといった感じである。 読まなくなって数十年。久しぶりに読むと、読むのに苦労している自分がいて、唖然とする。 漫画は、「吹きだし」と「絵」からなっている。吹きだしを読み、絵を見て、状況を把握し、次のコマに行く。次のコマは、どれだけか場面が進んだ一瞬であり、その間は読者が想像して埋めなければならない。活字と絵との行ったり来たり、その上での、コマ間の補填作業が頭の中でどうも巧くいかないのだ。そのため、全然、内容が頭に入っていかない。これなら、活字でずっと読んでいたほうが単線作業で楽である。こう思って、興味が完全になくなった。つまり、私は、最初から「否定派」なのではなく、ついていけなくなった「脱落派」なのである。
おそらく、同様のことが、子供たちにも起こっている。私のほうは、脳の老化のためだが、彼らは、もっと刺激のある映像が既に情報流入の主力となって、それで育った世代だから、漫画を読む訓練(!)ができていないのである。イマジネーションを飛翔できる大事な空白部分を、彼らは、逆に、不完全なものあると感じるのだろう。 映像は与えられるだけ。こちらの想像力を潜り込ませる余地はない。結局、アニメーションが「漫画文化」を奪ったことになる。私たち年配者にしてみれば、同じもののように見える二つのメディアだが、漫画は、今や活字文化に近い運命を辿りつつあるようだ。 動かないキャラクターは、アニメの不完全版、乃至、下請け代用バージョンでしかない。そんな感覚である。 生徒は、コミック目当てに図書室に来てくれる。活字と同じ「紙プリントメディア」として、仲良くしていかねばなるまい。 そういえば、昔よくあった教室での漫画本の貸し借りも、CDと同様、最近はほどんど見かけなくなったような気がする。
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